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東京大学生産技術研究所とLIXILの共同実証実験住宅「COMMAハウス」完成
2020年に広く普及するスマートハウスを目指し、
住宅におけるエネルギーマネジメントの実証実験を開始します

2011年08月18日

 東京大学生産技術研究所(所在:東京都目黒区、所長:野城智也)と株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:藤森義明)、株式会社LIXIL住宅研究所 アイフルホームカンパニー(本社:東京都江東区、プレジデント:勝又健一朗)が、2020年に広く普及するスマートハウスを目指し、エネルギーマネジメントの実証実験を共同で行う、実験住宅『COMMAハウス(コマハウス)』(COMfort MAnagement ハウス)が、東京大学駒場Uキャンパス内に完成しました。本年8月から2016年3月の期間でさまざまな実験を実施します。
 『COMMAハウス』とは、いえ・もの・情報・ライフスタイルを統合して、快適性・省エネ性を実現し、持続可能エネルギーの最大導入に貢献する住宅を、2020年に広く普及させることを目指し、さまざまな実験を行なうための住宅です。気密・断熱・耐震機能に優れた構造体に、風・光・熱をコントロールする開口部材や、太陽光発電・太陽熱利用機器・省電力照明(LED・有機EL)・HEMS*1を備えています。

 『COMMAハウス』は、特定メーカーによる機器の利用状況の見える化や省エネルギー制御といった機器中心の考え方にとどまらず、建物そのものの特性やプランニングを活かし、住宅としての性能、意匠性を維持しつつ、そこで暮らす人の快適性を最適なエネルギーコントロールで実現することを狙います。さまざまなメーカー、異業種の機器の協調運用ができるオープンなシステムで実験を行い、蓄積したデータをライフスタイル提案に活用するなど住まい手を巻き込んだ取り組みを進めます。東日本大震災による教訓を活かし、分散電源やエネルギー貯蔵などの自立性の確保についても検討していきます。
 この実証実験を通じ、全体のエネルギーシステムと協調しつつ、創るエネルギーと消費するエネルギーの需給バランスを確保する、快適でサステナブルな2020年のスマートハウスの提案・商材の提供を目指します。

*1)HEMS(Home Energy Management System):センサーやITを活用し、住宅のエネルギー管理を行うシステム



■背景
 3.11以降、電力供給量不足が懸念され、再生可能エネルギー導入の期待も高まっていますが、太陽光発電や風力発電などは、気象条件などによる発電量の変動が大きく、電力システム全体での需給調整が難しくなるとされています。一方、電気やガスなどの国内エネルギー使用量のなかで、ビルや住宅など民生部門の割合はエネルギー全体の約1/3を占め、そのうち約4割が住宅で消費*2されています。供給側からの集中エネルギーマネジメントだけではなく、エネルギー貯蔵も含めた需要の能動化による需給調整制御=分散エネルギーマネジメントが実現できれば、資源の有効利用にもつながり、エネルギー問題解決に大きく寄与します。また、個々の住宅や小さなコミュニティ単位で分散してエネルギーマネジメントが可能になることで、震災時などのリスク回避にも貢献できると考えます。
 *2)資源エネルギー庁 エネルギー白書2010より http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2010/index.htm


■COMMAハウスの特長・狙い
 『COMMAハウス』は、特定メーカーによる機器の利用状況の見える化や省エネルギー制御といった機器中心の考え方にとどまらず、下記の実現を目指しています。
 1. 家電・機器分野と建築分野の関係者の連携による住宅トータルとしての快適性、意匠性の追求。
 2. さまざまなメーカー・異業種の機器の協調運用を行う、マルチベンダーのオープンなシステム。
 3. 蓄積データの活用により、ライフスタイルの提案など、住み手を巻き込んだ提案。


■実験概要
 断熱性能を変化させ、さまざまな条件のもとでの住宅の快適性や省エネ設備の最適運転特性、建築による省エネ効果を測定し、分散エネルギーマネジメントの実証実験を行う。
 1. 建築的な手法による省エネルギーの可能性の検討
 2. 住宅におけるエネルギーマネジメント実証実験
 3. 住宅における最適エネルギー需給モデルの開発
 4. その他の関連試験

実験設備のイメージ


■実証実験の紹介
 2011年度は、住宅の断熱性能を変化させながら、太陽光発電、給湯器、空調機をはじめ各種機器の運転試験を行い最適運用の解析などを実施します。『COMMAハウス』の特長的な実験内容について一部紹介します。

1.新しい環境部材による通風・採風実験
  外付け可動ルーバー*、通風室内建具*

 建物の南面をダブルスキンとし、外付けの可動ルーバーを配置。主に夏場の環境制御(日射遮蔽、通風)と室内からの眺望コントロールを行います。
 ダブルスキンとは、二重の外壁とその間の緩衝空間によって、建物の温熱環境を向上させる手法で、20世紀初頭の欧米の近代建築以降、広く提案されてきています。外壁周りに緩衝空間を設ける手法は、深い軒・庇に、広縁を設けた和風建築の特徴でもあります。現代の高気密・高断熱住宅にダブルスキンの手法を活かした可動ルーバーを設置し、その効果を検証します。
 電動サッシと連動させ、自然エネルギーの効果的な利用方法を提案すると共に、通風を効果的に取り入れるための開口部の制御方法の検証を行います。地窓やハイサイド窓を含め、68もの窓を設置して、細かなデータを計測・分析します。
*外付け可動ルーバー、通風室内建具は、実験用試作品です。









上左:ハイサイド窓   
上右:電動サッシ    
下左:通風室内建具
下右:地窓             

2.水まわり機器のHEMS連携の検証

 最新の超節水トイレ(洗浄水4L)、センサーで出止水するキッチン用水栓やセンサーの電力を水の流れでまかなう自動水栓を設置し、水の使用量を計測します。HEMSと連携することで、使用量を見える化し、エネルギー制御の検証を行います。

3.電力およびガスデータ計測と分析

 住宅におけるエネルギーマネジメント実証試験の一つで、分電盤における回路別電力消費量を、1分単位で計測することにより、使用用途を分析・把握します。
 各家庭のエネルギー消費パターンを把握することにより、見える化による無駄な消費の発見に寄与し、さらに、需要予測などのエネルギーマネジメントシステムのための基本となる情報を提供します。

4.住宅エネルギーマネジメント

 天気予報、住宅内のエネルギーなどの需要想定、リアルタイムの気象条件、機器運転状況、室内外の温度、湿度、照度などの情報に基づき、快適性、省エネ性の向上と、電力システムの需給調整への貢献を実現する、住宅用エネルギーマネジメントシステム(HEMS)の実証試験を行います。


■実証実験プロジェクト推進体制

東京大学研究チーム 東京大学 生産技術研究所
荻本和彦特任教授*    (エネルギー需給システム)
大岡龍三教授        (都市エネルギー工学)
鹿園直毅教授*       (熱エネルギー工学)
岩船由美子准教授*    (持続型エネルギーシステム)
今井公太郎准教授     (空間システム工学)
*:東京大学エネルギー工学連携研究センター
LIXIL参画チーム 株式会社LIXIL
株式会社LIXIL住宅研究所 アイフルホームカンパニー
 実験の計画、住宅の設計、実証実験の計測、データ分析は、共同で実施。
 実験住宅は、株式会社LIXIL住宅研究所 アイフルホームカンパニーが施工し、株式会社LIXILから東京大学 生産技術研究所へ寄贈。
 実験住宅の設備機器設置については、下記各社のご協力をいただいています。
   シャープ株式会社(太陽光発電システム)、
   東芝ホームアプライアンス株式会社(空調機ほか)、
   日本電気株式会社(家庭用蓄電システム)、
   矢崎総業株式会社(太陽熱集熱器対応型エコキュート)、
   山田照明株式会社(一部照明)、
   ルートロン アスカ株式会社(一部照明/電動シェード/コントロールユニット)
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■実験住宅の概要および、2011〜12年度のスケジュール

①実験実施期間 2011年8月〜2016年3月(期間終了後撤去)※2010年5月計画開始
②建物規模 一般戸建て住宅想定 延床面積93.31m2
③住宅性能 2020年頃の一般的な断熱・気密性能を有する住宅。(東京地区を想定)
設備・空間・断熱性能などを調整可能(断熱性能の可変範囲:Q値*3 1.6〜2.4W/m2K)。
④主要機器 太陽光発電システム、ヒートポンプ給湯機、ガス給湯器、太陽熱集熱器、空調機、LED/有機EL照明、分散エネルギーマネジメント装置、制御入力/表示機器など
⑤設置場所 東京大学駒場Uキャンパス(東京都目黒区)敷地内
*3)Q値:熱損失係数のことで、住宅の断熱性能を数値的に表したもの。
値が小さいほど断熱性能が高いことを表す。熱損失係数は、外壁や天井・床などの各部位の熱の逃げる量(熱損失量)を合計したものを延床面積で割って計算する。