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日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った徳島県上勝町にて、
分散型処理システム「エコ・サニテーション」の実証研究報告会
〜 汚泥発生量の削減・河川保護の観点で効果を確認 〜

2013年03月21日

住まいと暮らしの総合住生活企業である株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:藤森義明)は、日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行い2020年までにごみゼロを目指す徳島県勝浦郡上勝町と協働し、2012年4月からトイレのし尿や生活雑排水を戸別処理し、再利用・再資源化する分散型システム「エコ・サニテーション」の実証研究を実施してきました。約1年間データ収集を行い、汚泥発生量の削減ならびに河川保護の観点での効果について確認でき、2013年2月18日には上勝町役場およびゼロ・ウェイスト政策をすすめる関係者が集まり、実証研究結果の報告と意見交換会を行いました。

LIXILと上勝町は今後も協働で実証研究を行い、「ゼロ・ウェイスト政策に貢献し、河川を汚さない新しいサニテーションの仕組みづくり」を目指します。

1.研究スタートの背景

▲34品目のごみ分別をする上勝町の住民

上勝町は、2003年に「2020年までにごみの焼却や埋立てをなくす最大限の努力をする」という日本初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を行いました。34品目におよぶごみの分別、生ごみ処理機の全戸導入などを実施、そして最後に残っていた課題として、トイレ・浄化槽などから発生する汚泥の削減や資源化を検討していました。

一方LIXILは、下水道など汚水処理システムの整備が進んでいない地域の河川の汚染など、水に関する様々な課題を解決すべく、持続可能な仕組みの研究開発を国内外で進めてきました。そこでLIXILと上勝町は、LIXILが研究開発中の「エコ・サニテーションモデル」を上勝町の民家に設置し、実場面でのデータ収集と価値評価を協働でスタートする運びとなりました。

2.実証研究の概要

【研究テーマ】

家庭の排水は一般的に混合状態で一括処理されていますが、各発生源(トイレ、浴室、洗面、キッチンなど)の汚濁濃度は大きく異なります。 特にし尿は汚濁濃度が高く、家庭の排水をし尿とそれ以外の雑排水(浴室、洗面、キッチンなど)に分け、し尿は発酵分解処理して減容化、生活雑排水は専用の処理装置で処理することにより、放流水の水質向上、汚泥発生量の削減による処理コストの縮減が期待されます。

○評価期間:
2012年4月〜
○評価概要:
3人家族(夫婦2人+子供1人)の民家 屋外に試験機を設置
水道・電気代計測、水質の分析、地域全体としての費用対効果

▲ 「エコ・サニテーション」実証研究イメージ図

3.実証研究の結果と課題

収集データから、し尿は分解・減容化され約1年間の運転期間中、汚泥の引抜きは不要であり、雑排水の放流水質は、浄化槽と同等の放流水質でした。特に、窒素、りんの放流水質は高度処理型浄化槽レベルであることが確認されました。

使用者からは「シャワートイレも利用でき、通常のトイレのように使用できた」という評価を頂くことができました。さらに町の関係者の方からは「生ゴミも含めた処理の検討や国の補助金制度の対象にする必要がある」「戸建住宅だけでなく旅館施設等の対応方法はどうするのか」などの要望が出ています。

※ 窒素・りん・BOD除去が高度に処理でき、水道水源地域、湖沼や閉鎖性海域でのより一層の水質汚濁防止、富栄養化防止の目的で用いられる浄化槽

▲ 試験機を設置したお宅(右写真がトイレを設置した建屋)

4.今後の展開

意見交換会では上勝町のゼロ・ウェイスト政策を進める関係者が集まり、非常に活発な議論が行なわれました。日本で初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」した自治体である上勝町は、地方の豊かで貴重な水資源を守りながら、し尿や雑排水を地域で処理し、有用資源としてリサイクル可能とする新しい仕組みづくりを目指しています。

また、少子高齢化する日本、特に地方ではコンパクトで、地域にあるエネルギー(水力・太陽光など)を活用しながら、持続可能性のある仕組みが求められています。東日本大震災以降さらにこうした考え方が高まりつつある中、改めて上勝町とLIXILの目指すビジョンや課題を共有化し、実現に向けた取組みを強めていくことを確認しました。住民の声を聞き、住民と上勝町全体としてのメリットを総合評価・改良しながら、次年度も引き続きこの取組みをすすめていきます。

<上勝町とLIXILは、実証研究の延長に関する協定書に調印しました(2013年2月18日)>

▲ 上勝町 笠松町長【右】とLIXIL総合研究所 小田所長と協定書を交わしました

▲ 関係者による意見交換会風景

LIXILは、上勝町のほかに、新興国の不衛生な生活環境の改善と河川等の汚染防止を目指し、ベトナムで「エコ・サニテーション」の実験も行っています。日本国内から新興国まで、今後も「エコ・サニテーション」を通じて世界各地の水環境を保全し、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。