※グラニットカーテンウォール:石(花崗岩)をユニットに組み込んだカーテンウォール
2016年08月17日
住まいと暮らしの総合住生活企業である株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:瀬戸欣哉)では、株式会社西武プロパティーズが7月27日にグランドオープンした「東京ガーデンテラス紀尾井町」(紀尾井タワー/赤坂プリンス クラシックハウス/紀尾井レジデンス)において、乾式工法によるグラニットカーテンウォールや昭和初期に生産されたタイルの復原など高度な技術が採用されました。
「東京ガーデンテラス紀尾井町」は、『みどりと歴史に抱かれた国際色豊かな複合市街地』を目指しグランドプリンスホテル赤坂跡地に誕生した複合施設で、オフィス、ホテル、商業施設等からなる「紀尾井タワー」、東京都指定有形文化財に指定されている美しいチューダー様式を基調とした洋館「旧李王家東京邸」(旧グランドプリンスホテル赤坂 旧館)を保存・復原した「赤坂プリンス クラシックハウス」、高級賃貸マンション「紀尾井レジデンス」からなります。
左:紀尾井レジデンス 右奥:紀尾井タワー
右手前:赤坂プリンス クラシックハウス
「紀尾井タワー」では、オフィスフロア(5〜28階)にインターロック方式のユニットカーテンウォールが採用されました。超高層ビルの外装として求められる性能を満たすだけではなく、ユニットを細かく分割することにより、意匠コンセプトであるアコーディオンのようなジグザグの外観を実現しました。また、東西面には超高層ビルでは例の少ない自然の石(花崗岩)を乾式工法でユニットに組み込むグラニットカーテンウォールを採用し、外装の質感に多様性をもたらす意匠を実現しました。グラニットカーテンウォールは西日などの日射を遮り、断熱性を高める効果も持ち合わせています。施工面においては、すべてのユニットがジグザグであるため難易度の高い外壁面にかかわらず、1日約60ユニットのハイペースな施工を維持しました。
そのほか、紀尾井タワー30〜36階を占める最上級のプリンスホテル「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」においては、客室パウダールームに壁タイルが採用されたほか、プールやジャグジーにはすべりに配慮した床タイル、外構の水盤部分には意匠性を重視した特注タイルが採用されました。
「赤坂プリンス クラシックハウス」は、保存・復原された旧李王家東京邸と新たに増築されたバンケットで構成されます。当社は旧館のバルコニーに使われていた施釉床タイルを、昭和初期に生産された既存のタイルと違和感なく調和するよう忠実に復原しました。また、新たに増築されたバンケットに採用された低層カーテンウォールは、大開口ながら可能な限りスリムな形状とし、粉体塗装とメタリック塗装を駆使してクラシックな色合いに調色しました。
高級賃貸マンション「紀尾井レジデンス」には、135ある各住戸のパウダールームやユニットバスの床タイルなどが採用されました。
<参考資料>
外装デザインがアコーディオンの様にジグザグであるユニットは、通例では環状ガスケット方式による結合が容易ですが、より水密性が高く細いフレームで対応できるインターロック方式を採用しました。また、東西面の大きな特長である、石(花崗岩)をユニットに組み込んだグラニットカーテンウォールには、超高層ビルでは例の少ない乾式工法を採用しています。カーテンウォールの設計は、超高層ビルに求められる性能を満たすだけでなく、施工性にも配慮しました。
耐震性能については、水平変位である層間変位追従性能に加え、鉛直方向への大きな変位差にも対応できる構造としています。またカーテンウォールには居住者の快適性に配慮した自然換気装置を組み込みました。ガラスは高性能Low-Eガラスを使用することで遮熱性、断熱性を高め、冬期は熱損失を最小にし、夏季は日射熱を遮ることで快適性を高め空調のエネルギー効率を高めています。
【採用商材】 カーテンウォール7022ユニット、27000㎡
【採用部位】 紀尾井タワー オフィスフロア 5階〜28階
左:紀尾井タワー外観
中央・右:石(花崗岩)をユニットに組み込んだグラニットカーテンウォール
「旧李王家東京邸」(旧グランドプリンスホテル赤坂 旧館)は、日本の皇族に準じた扱いを受けて
いた
その旧李王家東京邸と新たに増築されたバンケットで構成される赤坂プリンス クラシックハウスでは、これまでに培ってきたやきものづくりの経験と、蓄積されたノウハウを活かし、昭和初期に生産された床タイルと違和感なく調和するよう、保存・復原に取り組み、テラス部分に使用されている施釉タイルの復原はLIXILものづくり工房が担当しました。
オリジナルタイルの成分分析など創建当時のタイル生産技術に関する情報を確認しつつ、現在の原料と技術と品質で外観意匠の復原に努めました。
左:復原タイルが採用された赤坂プリンス クラシックハウス、右:昭和初期に生産されたタイルを忠実に復原した施釉床タイル
試作中の施釉床タイル(左:150角花柄、右:150角布目)
※最上部はオリジナルタイル
素地面状と施釉方法など、当時のタイル製造方法を想定し、何種類もの確認試作を重ねて最終加飾方法を決定し、復原しました。
オリジナルタイルと復原タイルを同じ場所で組み合わせて施工するため、色味や釉薬反応による表情のバラツキを数段階製作して、オリジナルタイルの味わいある不揃いな意匠に溶け込む復原品の製作に努めました。
【採用部位】赤坂プリンス クラシックハウス
「ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町」のプールやジャグジーには、ラグジュアリーな空間にふさわしい意匠性とすべりに配慮した安全性を兼ねた床・壁タイルなどが採用されました。また、「紀尾井レジデンス」各住戸のパウダールームとユニットバスの床は、水濡れの程度によりそれぞれ求められる条件※が異なるため、同じシリーズでデザインを統一しつつも、仕上げ面状を変更する事で、快適な空間となるように配慮されています。紀尾井レジデンスと紀尾井タワー、そして地下鉄を結ぶ共用通路にも、すべり安全性を考慮した床タイルが採用されています。さらに、紀尾井タワー外構水盤部には水面の反射が強調されるように、色や艶を調整した艶やかな青いタイル(特注品)が採用されました。
※採用された床タイルは、人間の感覚を尺度化する官能検査結果と、すべり試験機の抵抗値を対応させつつ、より実状に近いすべり評価をしています。プールやユニットバスなど素足で歩行する空間で水濡れがある床部や、パウダールームなどの水濡れがない屋内床部のほか、屋外の土足で歩行し水濡れがある床部、といった異なる環境において求められる条件によって測定方法を変え、安全性に配慮しました。
紀尾井テラス2階の共有通路
意匠性に配慮した鮮やかな青いタイル(紀尾井タワー外構水盤部)
【工事概要】
■ 所有者:株式会社西武プロパティーズ
■ 所在地:東京都千代田区紀尾井町1−2他
■ 敷地面積:約30,400㎡
■ 延床面積:オフィス/約110,000㎡、ホテル/約28,700㎡、住宅/約22,700㎡、商業/約10,800㎡
■ 設計・監理:株式会社日建設計
■ 外装デザイン:Kohn Pedersen Fox Associates P.C.
■ 工期:2013年1月〜2016年5月
紀尾井タワー
■ 階数:地下2階地上36階(商業施設1〜4階、オフィス5〜28階、ホテル30〜36階)
■ 高さ:約180m
■ 構造:S造ほか(制振構造)
■ 施工:鹿島・鉄建・熊谷 建設共同企業体
紀尾井レジデンス
■ 階数:地下2階地上21階
■ 高さ:約90m
■ 構造:高強度鉄筋コンクリート造(免震構造)
■ 施工:西武・大林・前田 建設共同企業体
赤坂プリンス クラシックハウス
■ 階数:地上2階、搭屋付
■ 構造:RC造、一部木造(一部免震構造)
■ 施工:鹿島・鉄建・熊谷建設共同企業体、西武・大林・前田建設共同企業体