2011年11月04日
住宅設備機器・建材の総合メーカーである株式会社 LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:藤森義明)は、ミュージアム活動25周年、体験・体感型ミュージアム『INAXライブミュージアム』(所在地:愛知県常滑市)グランドオープン5周年にあたり、記念事業の第1弾として、「窯のある広場・資料館」の1階展示を全面リニューアルし、2011年11月6日(日)午前10時から一般公開します。
常滑でのミュージアム活動の発端である最初の施設「窯のある広場・資料館」は、1986年に開設し、本年は25周年にあたります。また、同館を含む一帯の文化施設を統合、拡大し2006年にグランドオープンした『INAXライブミュージアム』もこの10月に5周年を迎えました。
日本で唯一、世界の装飾タイルコレクションを展示する「世界のタイル博物館」、「土・どろんこ館」の建築そのものや、光るどろだんごづくりをはじめとする各種体験教室、独自企画の展覧会、ワークショップの開催など、活動を通して土とやきものの魅力を伝え、地域に開かれた親しまれるミュージアムとなりました。2006年グランドオープン後の累計来場者は、35万5千人を超え、昨年も7万2000人の方に土とやきものの魅力に触れていただきました。
今回、大窯と煙突を有し、『INAXライブミュージアム』のシンボル的存在である「窯のある広場・資料館」を“常滑のやきもの産業の歴史”を紹介する展示館と位置づけ、「日本の近代化を支えた常滑の土管」をテーマに1階展示をリニューアルしました。日本の都市や農業の近代化を支えた土管(陶管)製造の様子や、『常滑』のやきもの産業の発展の歴史をわかりやすく展示します。 この「窯のある広場・資料館」の大窯は、1921年(大正10年)に建造され、土管や焼酎瓶、クリンカータイル(せっ器質施釉床タイル)などが製造されました。この大窯の外周を囲む展示室には、内径90cmの大きな土管や、土をこねて土管の形に成形する生産設備などを展示し、日本の近代化を文字通り、土の下で支えた技術を紹介します。 |
「窯のある広場・資料館」の新展示 |
2012年4月には、5周年記念事業の第2弾も計画しており、今後も『INAXライブミュージアム』では、“観て・触れて・感じて・学び・創りだす”をテーマに、こどもから大人まで楽しめ、共感できる“体験・体感型ミュージアム”として、さまざまな企画を展開していきます。
■ INAXライブミュージアム5周年事業の狙い
LIXILでは、土とやきものが織りなす多様な世界を体感し、ものづくりの楽しさや素晴らしさ、その心を「発見・継承」する“体験・体感型ミュージアム”として、『INAXライブミュージアム』を運営しています。土とやきものの魅力を“観て・触れて・感じて・学び・創りだす”独自企画による展覧会や体験教室、ワークショップを開催しており、グランドオープン以降、延べ35万5千人(年間約7万人)が来場しています。 5周年を迎え、あらためて企業博物館としての意義を確認し、『INAXライブミュージアム』ならではの視点で「ものづくりの心や技術」を未来へ伝え、それらを共に学んでいく場を提供することで、社会に開かれ、地域の発展に寄与できる展示を企画しました。 |
「窯のある広場・資料館」外観 |
新しい展示では、日本の近代化を支えた「土管」について紹介。地元の産業や歴史をあらためて知る機会として、地域の小学校との連携授業にも活用していく予定です。 |
■ 窯のある広場・資料館1階リニューアル 「土管」展示の概要
今回のリニューアル展示では、大正から昭和にかけて「窯のある広場・資料館」の大窯でも製造されていた「土管」にスポットをあてました。地面に埋設され、これまで注目されることが少なかった「土管」が、支えてきた日本の近代史にも迫ります。
1)さまざまな土管 「土管」は、おもに上下水道の管として利用されてきました。長さは60cmほどで、内径90cmの大きな本管(3尺並土管)から内径5cmほどの細いものまで、さらに、曲がったものや枝付き管と呼ばれた分岐管など、さまざまな形状のものがあります。これらの土管が、近代化が進む都市の地下に網の目のようにはり巡らされ、人びとの生活を支えてきました。 |
さまざまな形状の土管 |
内径が3尺(約90cm)もある大きな土管 |
また、鉄道が整備される中、線路で上下水道が寸断されないよう、農地などでは盛り土の上に敷かれた線路の下に、耐久性の高い土管が埋設され、振動に耐えてその役割を果たしてきました。 展示では、土管を連結して見せる展示や、子どもが入れるくらい大きな径の土管など、実物に触れていただくと同時に、写真やイラストで、土管を知らない世代にも、地下に埋設された土管の様子や役割、歴史的背景について、わかりやすく解説します。 |
2)土管の製造場面を知る サイズもさまざまで形状も多様な「土管」が、どのような方法で生産されていたのかを展示解説します。製品の品質を調えるために材料の土をこねる土錬機(どれんき)や、土管の筒状の形を成形するための押出成形機(おしだしせいけいき)の実物を展示し、機械の力を活用しながらも人の手で大量生産していた当時の様子を学んでいただけます。 また、長さ60cmほどの土管は、大変重く、8寸並土管と呼ばれる内径が23cmほどのサイズのものでも1本26kgの重量になります。それらの土管を何本も運ぶための道具「伊奈式運搬車」は、伊奈製陶の創業者伊奈初之烝(いなはつのじょう)が発案したもので、労働者の作業を大きく軽減しました。このように当時の工場での様子を臨場感ある展示で見学いただけます。 伊奈式運搬車で土管を運ぶ様子/ 常滑郷土文化会つちのこ「なつかしき常滑」より |
伊奈式運搬車 |
3)往時の『常滑』に触れる 愛知県常滑市は、日本六古窯の一つであり、古くからやきものの盛んな町で、INAX創業の地です。「窯のある広場・資料館」の窯は、両面焚倒炎式角窯(りょうめんだきとうえんしきかくがま)と呼ばれ、大正10年(1921年)に築窯されたものです。窯の内寸は、間口5.5m、奥行11m、高さ3.9mと非常に大きく、1997年に、国の登録有形文化財(文化庁)に、2007年には、近代化産業遺産33ストーリー(経済産業省)に認定されています。 当時、常滑にはこのような窯が街中にあり、土管や焼酎瓶などが焼成されました。日本の土管生産量がピークを迎えた昭和30年前後には、常滑を中心とする愛知県の土管生産量は2,000万本を超え、国内32%のシェアを誇りました。常滑の空は煤で灰色に染まり、雀までが黒かった、と言われる当時の街の様子を撮影した写真なども展示し、地域の産業の歴史を伝える場としていきます。 土管を見たことのない子どもたちにも楽しく窯や土管の秘密を学ぶ展示パネルも設置しており、今後さらに、教育関係者と意見交換しながら、教材の提供や見学・学習、講師派遣など、地元の小・中学校と連携を図りながら、地域社会の役に立ち、常滑の未来に貢献できるよう、企業市民としての役割を担っていきます。 |
製品が窯詰めされた窯の内部 |
窯の煙突が林立する常滑の風景 /常滑郷土文化会つちのこ「なつかしき常滑」より |
■ 展示内容
1階リニューアル展示
1.日本の近代化を支えた土管
2.土管のある風景「敷設」 連結された土管
土管のある風景「資材置場」 3尺土管(内寸90cm)3個連結(中をくぐれます)
資材置き場に積み上げられた土管
3.鯉江方寿(こいえほうじゅ)と土管ができるまで
4.土管生産の近代化 土練機(どれんき):原料の粘土を練る機械。 動力:電気モーター
機械化 土管機(どかんき):土管を成形する機械。 動力:電気モーター
運搬機:土管を運ぶ車。せた車、すくい車とも呼ばれる。 動力:人力
5.土管の種類 様々な種類の土管を展示
2階展示
青と白の美しい紋様を施した「染付古便器」を展示しています。
今回のリニューアルに伴い、2階へ上がる螺旋階段を修繕し、昇降機も設置しました。
■ 窯のある広場・資料館 概要
窯の概要 名称 両面焚倒炎式角窯(りょうめんだきとうえんしきかくがま)
沿 革 1921年(大正10年)築窯、1971年(昭和46年)操業停止
建 物 木造3階建て。現在は3階の床部分を撤去
煙 突 台座付角型、赤煉瓦積、高さ21m
内 寸 間口5.5m 奥行11m 高さ3.9m
焚 口 片面7箇所、両面合計 14箇所
主要焼成品 土管(陶管)・焼酎瓶・硫酸瓶・クリンカータイル(いずれも食塩釉)
焼 成 窯入れ・窯出し 約2日間 焼成 3〜4日間(約71〜90時間)
冷 却 10日間(密閉のまま冷却、4〜5日経過後徐々に開放し、冷却)
燃 料 石炭
施設の概要
建築面積 373m2 延べ床面積 630m2
1986年(昭和61年) 窯のある広場・資料館として整備・公開
2004年(平成16年) 建屋耐震補強実施
■ INAXライブミュージアム概要 ■ 「世界のタイル博物館」「窯のある広場・資料館」「土・どろんこ館」「陶楽工房」「ものづくり工房」の5つの施設で構成された“体験・体感型ミュージアム” 所在地:愛知県常滑市奥栄町1−130 TEL:0569-34-8282 総面積:15,000平方メートル 総従業員数:29名 開館時間:午前10:00〜午後17:00(入館は16:30まで) 休館日:毎月第3水曜日、年末年始 共通入館料:一般600円、高・学生400円、小中学生200円 ホームページアドレス:http://inax.lixil.co.jp/ilm |