2012年10月03日
住まいと暮らしの総合住生活企業である株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:藤森義明)は、国指定重要文化財である東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事(事業主: 東日本旅客鉄道株式会社)において、東京駅の象徴的な化粧煉瓦※1(通称:赤煉瓦)の再現に成功し、戦災後の工事によって撤去された3階部分の外壁(化粧煉瓦約40万枚)として採用されました。
※1:化粧煉瓦と外装タイル:明治〜大正にみられる煉瓦造建築で、躯体となる煉瓦の壁を装飾するために、その上に張り付けた薄い煉瓦を「化粧煉瓦」と呼ぶ。後に普及した、鉄筋コンクリート造の建築躯体に張り付ける「タイル」と、製法や用途が同じであることから、大正11年に「タイル」という呼称に統一された。
1914(大正3)年、建築家の辰野金吾の設計によって創建された東京駅丸の内駅舎は、明治から大正期の洋風建築を代表する赤煉瓦の建物として知られ、南北にドームを配したその壮麗な姿は、首都東京の玄関口を象徴してきました。1945(昭和20)年、戦災によって3階部分の一部分が焼失したことから、2階建ての建築として復旧し現在まで知られている姿になりました。
LIXILでは、これまでに培ってきたやきものづくりの経験と、蓄積されたノウハウを駆使し、現存する1、2階部分と違和感なく調和する赤い化粧煉瓦の製造に挑戦しました。また、製造協力工場として、これまでにもLIXILと共に数々の歴史的建造物の復原に積極的に取り組んできた実績を持つタイルメーカー株式会社アカイタイル(本社:愛知県常滑市、社長:赤井祐仁)をパートナーとし、2003年から試作を重ね、2010年の本生産が開始されるまで7年間も試行錯誤を繰り返し、試作品だけでも15,000枚を超える一大プロジェクトとして復原に取り組みました。
LIXILでは、これからも建築の保存再生におけるタイルの復原に取り組み、価値ある建築文化を後世に受け継ぐ事業へ積極的に協力していきます。
<参考資料>
【東京駅丸の内駅舎 化粧煉瓦復原について】
東京駅丸の内駅舎の外装を彩る化粧煉瓦の赤い色合いは、まさに首都、東京の玄関口である東京駅を象徴するものです。創建当時、外壁化粧煉瓦の製造は品川白煉瓦(株)が行いましたが、原料や窯の焼成温度など生産条件の違いから、同じ赤い化粧煉瓦でも、必然的に少しの色差が生じていました。しかし、窯業技術の進歩した現代においては、故意に色の差をつけてその分布を再現することが必要となりそのための生産条件を見つけることが最大の課題となりました。
LIXILでは、現存する創建当時の化粧煉瓦と違和感なく張り合わせ、建築の外観を再現するために、7年間もの時間を要して化粧煉瓦の試作を重ねました。
原料の確保
創建時の化粧煉瓦の主原料と同じだったと思われる、知多半島産の赤土を使用することを最初に決定しましたが、天然の原料であるために、採掘場所や採掘時期によって成分に違いが生じ、焼成した色合いも大きくばらつくことが予測されました。そのため、見本品で採用が決まったとしても、本生産の時に同じ色合いを再現することは難しいため、本生産用の赤土100tを確保したうえで、見本品の制作を実施しました。
焼成する窯の条件設定
現在のタイルの一般的な焼成温度(1,200℃〜1,250℃)では、求める「明るい赤色」の再現ができないため、当時の焼成温度(1,000℃〜1,100℃)で焼成する、専用の焼成条件を整える必要がありました。生産窯のひとつを、この化粧煉瓦専用にしてしまうことは、メーカーとして非常に大きなリスクを負うことになりますが、それに敢えて挑戦する英断をしたのが、歴史的建築物のタイルの復原に実績を持つアカイタイルでした。
創建当時の化粧煉瓦の色合いのばらつきは、生産工場の違いや原料の採取条件の違い、石炭窯による焼成温度の違い等によって必然的に生じるもので、厳しい管理基準のもとで均質な色合いの煉瓦生産に努めても、合格率は40%程度だったと記録されています。
格段に進歩した現代の窯では、色合いのばらつきは当時に比べはるかに小さくなっているため、今回の復原では、生産条件をコントロールし、既存部分に対して違和感なく調和する色を生み出さなくてはなりません。試作では、このコントロールの条件を見つけ出すことが大きな課題となりました。焼成する条件と原料の調合を少しずつ変えながら、試作を繰り返し、見本制作したタイルは全てその色合を測定(測色)して記録しました。試験した条件は50を超え、1つの条件の試作では約100枚のタイルを焼いています。本番を想定し、大ロットでの生産試験も実施しました。このようにして、15,000枚を超える見本品を試作し、最終的な製造条件を得るに至りました。
▲測定作業
▲色合いのばらつきを再現した化粧煉瓦
(3階部分)
2010年に本生産実施が決まり、再び現地にて色合いを測定し本生産の条件を確認しました。この結果をもとに3つの条件で焼成したタイルをブレンドして使用することが決まりました。コーナー用のタイルも、手作業工程を交え生産することになりました。
本生産では、2010年年末から2011年年始にかけて、約40万枚のタイルを焼成しました。わずか2週間の生産期間ではありましたが、2003年に試作を開始してから7年を経てたどり着いたことになります。
事 業 主 : | 東日本旅客鉄道株式会社 |
設 計 : | 東日本旅客鉄道株式会社、東京工事事務所・東京電気システム開発工事事務所 東京駅丸の内駅舎保存・復原設計共同企業体 (株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所・ジェイアール東日本コンサルタンツ株式会社) |
監 理 : | 東日本旅客鉄道株式会社 東京工事事務所・東京電気システム開発工事事務所 株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 |
施 工 : | 東京駅丸の内駅舎保存・復原工事共同企業体(鹿島・清水 鉄建 建設共同企業体) |
タイル施工: | 不二窯業株式会社 |
タイル販売: | 株式会社ダイナワン |
タイル製造: | 株式会社LIXIL、株式会社アカイタイル(協力工場) |
竣工: | 大正3年 |
構造: | 鉄骨煉瓦造 |
<煉瓦製造会社>
躯体煉瓦: | 日本煉瓦会社 |
化粧煉瓦: | 品川白煉瓦(株) |
<使用量>
躯体煉瓦: | 833万個 |
化粧煉瓦: | 94万個 |
本 社: | 愛知県常滑市金山字北大根山1-9 |
設 立: | 1955年(昭和30年)2月 |
代 表: | 取締役社長 赤井祐仁 |
事業内容: | 外装壁・床タイル、インテリアタイル、特殊用途タイルの製造販売 |
主な復原実績: