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<「学生のための住宅デザインコンペ」、「国際大学建築コンペ」最優秀賞作品>
大学生が設計した次世代サステナブル住宅2棟 「メム メドウズ」に竣工
〜今後、実証データをもとに技術の有効性を検証し、新しい技術の確立を目指す〜

2012年11月19日

住宅・建材産業に関する調査・研究及び、人材育成等の事業に対し助成・支援する 公益財団法人LIXIL住生活財団(所在地:東京都江東区、代表:理事長 潮田洋一郎、以下:LIXIL住生活財団)は、大学生が設計した次世代サステナブル住宅2棟(「町まとう家」:早稲田大学設計、「BARN HOUSE」:慶應義塾大学設計)が、環境技術研究施設「メム メドウズ」(北海道広尾郡大樹町)に竣工したことを発表します。

「町まとう家」/設計:早稲田大学

「BARN HOUSE」/設計:慶應義塾大学

今回建設された2棟は、LIXIL住生活財団が主催した2つの大学生を対象とした建築コンペにおいて最優秀賞を獲得した作品です。また副賞として、設計した住宅を実際に「メム メドウズ」内に建設する特典があり、今回の竣工を迎えました。

1つ目の「町まとう家」(設計:早稲田大学)は、2011年10月28日に、震災復興支援の一環と、「メム メドウズ」開設に合わせて北海道大樹町で開催された「学生のための住宅デザインコンペ」で最優秀賞を獲得した作品です。“震災を経験した後に我々はどのような家を作れるのでしょうか 〜震災後の新しい時代にふさわしい新しい家”をテーマに、学生によって設計された住宅で、応募総数77作品の中から選ばれた作品です。

もう一方の「BARN HOUSE」(設計:慶應義塾大学)は、2012年4月27日に、次世代のサステナブル住宅の技術を模索・検証し、地球社会にその技術を発信することを目的に初めて開催され、9カ国・12大学が参加した「国際大学建築コンペ」で最優秀賞を獲得した作品です。北海道大樹町での建設が条件であり、この地の特長でもある牧場、中でも“馬との共生”をテーマに設計された住宅です。

2つの建築コンペでは、審査委員長に隈研吾 氏(東京大学教授)を迎え、コンペのテーマ、コンセプトの決定から、最終審査までご協力いただいています。

今後2つの住宅は、竣工後も自ら設計した独創的な“次世代サステナブル住宅”の実証を続け、その効果検証を続けていきます。LIXIL住生活財団も地元自治体(北海道大樹町)と共に継続的に支援し、またその実証結果の情報発信も行っていきます。

■「国際大学建築コンペ」「学生のための住宅デザインコンペ」ホームページ

<参考資料>

■「町まとう家」/設計:早稲田大学

(設計者)

  • 小笠原 正樹さん(早稲田大学 創造理工学部 建築学科 古谷誠章研究室)
  • 塚田 圭亮さん(早稲田大学理工学術院 創造理工学研究科 建築学専攻 古谷誠章研究室)
  • 三上 恵理華さん(早稲田大学理工学術院 創造理工学研究科 建築学専攻 古谷誠章研究室)

【コンセプト】

被災後の新しい家づくりを考え、今あるもので、今あるもの以上の豊かさが得られないか、また北海道大樹町を象徴する「牧草」に着目し、牧草を乾燥させ、その発酵熱を利用する。

牧草をまとう家

【特長】

・町の営みにリンクした生活環境

夏季に外壁で乾燥させた牧草は刈り入れ時期にケースに密封され、家内部の棚に収納される。
乾燥時の牧草は水分蒸散により遮熱スクリーンに、冬季ケースに密封される牧草は発酵の発熱を利用し家の採暖となり、季節とともに家の姿を変化させる。

牧草を利用した内装

・町の方々が集う家

形を変えながら人の生活環境をつくる牧草の脱着は一人の人間には手間がかかり過ぎるが、町に住む方々との共同作業を誘発する。この作業は東日本大震災以降、見直されてきた人のつながりという価値をカタチにし、より豊かな暮らしのありかたを育てるきっかけをつくる。

■「BARN HOUSE」/設計:慶應義塾大学

(設計者)

  • 小松 克仁さん(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻 ラドヴィッチ研究室)
  • 篠原 正人さん(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻 ラドヴィッチ研究室)
  • 橋田 渉さん(慶應義塾大学大学院 理工学研究科 開放環境科学専攻 ラドヴィッチ研究室)

【コンセプト】

馬との生活は、この土地が元々競争馬を飼育していた場所であり、この土地の持つ記憶を引き継ぎながら、温熱環境に優れた建築を作る。また、馬は人間の10倍ほどの代謝熱を放出し、また糞は堆肥化の過程で多くの熱を発生するため、その熱を利用することで、文化、産業、生活、すべての要素が一つに集まる場所。

コンポストスペース

【特長】

・馬糞の発酵熱を利用

馬糞は適度な酸素と水分を加えることで発酵を行います。その際に発生する熱を熱源として活用します。

・バッファーとしての馬の空間

外気に直接面するのではなく、馬の空間をバッファーゾーンとして配置することで、北海道の厳しい気候に柔軟に適応できる建築となっています。

厩舎

炭を使った内観

・脱臭そして発酵促進剤としての炭

馬の空間に置いておく事で、その孔はアンモニアを吸着し、また堆肥庫の中に混入することで孔から酸素、水分が放出され発酵が促進されます。

◆「メム メドウズ」施設概要について
− 真に豊かな社会を実現するために、私達が取り組むべき課題とはなんでしょうか。

省エネルギー、バイオマス、低炭素社会の実現、室内温熱環境のコントロール、耐震構造の検証など実にさまざまです。これら住宅をとりまく多様な実験に取り組める施設として、冬季には外気温が−30℃に達する気象条件の厳しい大樹町に、環境技術研究機構の「メム メドウズ」を開設しました。牧場跡地にもとから在った住宅や施設を取り壊さず、土地の持つ記憶をそのまま風情として残しながら改修して、資源も有効に活用しています。

北海道大樹町は、冬季は厳しい寒さにも見舞われますが、その反面、季節が美しく移ろう豊饒の大地です。土地の名前「芽武(メム)」には「泉の湧き出るところ」という美しい意味があります。
この地で、住まい手にとって真に快適な住環境とは何かを、利用者の皆さんと一緒に追求していきたいと願っております。

<隈研吾氏デザイン 寒冷地実験住宅「メーム(Même)>

「メーム(Même)」外観

研究施設「メム メドウズ」内のシンボル的な施設であり、第一号の“寒冷地実験住宅”「メーム(Même)」は、北海道古来の住宅をモチーフに、光を透過する白い膜材を二重構造(ダブルスキン構造)で壁と床を仕上げた、隈研吾氏 設計・東京大学生産技術研究所 野城研究室 技術支援によるユニークな実験住宅です。ダブルスキン構造による高い断熱性や、地熱を利用した蓄熱式床暖房など、両者の先進のアイデアを取り入れ、デザイン性にも優れた「メーム(Même)」は、温熱環境の変化や、地震発生時のデータ計測など、長期的なデータ収集が可能な実験住宅でもあります。

<施設概要>

名  称 : 「メム メドウズ」
所 在 地: 北海道広尾郡大樹町字芽武158-1
※旧「大樹ファーム」跡地
所  有 : 公益財団法人LIXIL住生活財団
〒136-8535 東京都江東区大島2-1-1
敷地面積: 約56,000坪
主要施設: 寒冷地実験住宅「メーム(Même)」(右上写真参照)、多目的ホール、ラボ棟、
住宅1、2、3号棟(研究者向け宿泊施設)、
ログハウス1、2号棟(研究者向け宿泊施設)、運動棟、
レストラン、管理棟 など
施設概要: 公益財団法人LIXIL住生活財団が、その設立理念に基づき、北海道大樹町に設立した環境技術研究機構の名称。同機構の中心となるのが、隈研吾建築都市設計事務所が設計した寒冷地実験住宅「メーム(Même)」である。

〜「メム メドウズ」2012年10月 グッドデザイン賞を受賞〜

「メム メドウズ」が、単なる実験・研究施設という枠を超え、当財団が主催し世界の大学生が参加する「国際大学建築コンペ」の優勝作品を実際に建設する場であったり、その建設に地域住民が積極的に参加するなど、コンセプトそのものがサステナブルな都市を形成するアイデアの発信拠点であると高く評価され、住宅・住宅設備カテゴリー部門での受賞となりました。