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国際NPOと協働で、
水に関する環境教育活動を実践中
〜水の大切さを現地の子どもたちと一緒に考え行動します〜 2012年7月21日-26日

2012年09月03日

株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区、社長:藤森義明)と現地子会社LIXIL INAX VIETNAM Corporation(以下LIXIL VIETNAM)は、ベトナム社会主義共和国(以下ベトナム)で2007年から現地の子どもたちを対象に、「水に関する環境教育活動」を行なっています。現在は「Bridge Asia Japan」(以下BAJ)と「Seed to Table」(以下STT)の2つの国際NPOと協働で活動を推進しています。

一方、ベトナムの国情は、急激な経済発展に伴い、貧困層と富裕層の格差拡大や公害問題、衛生問題、子どもの人権保護問題などが生じ、社会的制度が追いつかない状況にあります。LIXIL(当時のINAX)は、ベトナムの発展とともに現在の地位を築いてきた企業として、少しでもベトナム社会の役に立ちたいと考え、2007年から実績ある国際NPOと具体的な環境教育活動を開始しました。「水」をテーマに、ベトナムの今後を担う子どもたちにとって本当に必要とされる教育の支援を目指しています。単なる資金援助活動にとどまらず、オリジナル教材「水について考え、調べてみよう」を支給し、LIXILスタッフが現地の教壇に立ち、ベトナムの社会情勢や環境に沿った内容と提案で、継続的に環境教育を実施しています。

LIXIL統合後3回目となる今回は、ハノイ北部ホアビン省と中部フエでの環境教育活動やLIXIL VIETNAMの工場見学を行い、子どもたちや国際NPOとの交流を深めました。ホアビン省では、新たにディッグザオ村で活動を実施しました。7月21日(土)〜7月26日(木)の6日間に渡って、STT や BAJのスタッフとともに現地で活動した様子を紹介します。

 目 次

■7月22日 STTとともにディッグザオ村での水の環境授業
■7月23日 LIXIL VIETNAMでの活動報告と工場見学
■7月24日 BAJとともにフエ トゥイビュウ地区での活動
■7月25日 フエ トゥイビュウ地区の農家訪問

ベトナム ホアビン・ハノイ・フエ訪問の行程概要
LIXILのベトナム事業について
ベトナム環境教育活動の考え方とこれまでの歩み

■ 7月22日 STTとともにディッグザオ村での水の環境授業

熱心に授業を聴く子どもたち

各自準備した水をサンプルに測定

色の変化に興味津々の様子

ディッグザオ村はホアビン省タンラック郡に位置し、約840世帯、約3,600人が14の集落に暮らしています。ホアビン省はベトナム北西部に位置する山岳地帯で、ハノイから約80kmと比較的近い距離ながら、いくつかの少数民族が独自の言語や伝統習慣を継承しながら生活しています。

村では近年、人口増加や生活スタイルの急速な変化に人びとの知識や情報が追いつかず、ゴミの廃棄や水源の汚染が問題になっていました。そこで、ディッグザオ村の代表から、水について正しい知識を身に付けるためにLIXILの環境授業を行いたいという要望があり、2012年2月に村の状況についてヒアリングを行い、今回、活動を実施することになりました。当日は、小中高生と青年団合せて91名が参加しました。
午前は、オリジナルテキスト「水について考え、調べてみよう」を使った座学を行いました。科学的視点での水の基本知識だけではなく、手や身体を清潔に保つことで下痢などの病気を予防できること、病気の予防には水をきれいに保つことが重要であるというようにベトナムの実情に沿った内容で授業は進み、子どもたちは約2時間半の間、講師であるLIXILスタッフの問いかけにも応じながら、熱心に学んでいました。

午後は集落ごとに採取してきた井戸水と川の水について、調査キット「パックテスト」を用いた水質調査と、ペットボトルで作る透視度計を使った透視度測定を行いました。水質調査では、水のpH値やCOD値、リンや窒素などの含有量を測り、科学的に水質を確認していきます。化学反応によりキットの色が変わる様子に、子どもたちも興味津々の様子でした。測定結果は紙にまとめ、各集落の結果を共有するとともに、地域によって水脈が異なる可能性があることなどを確認しました。

この日の座学と実習を通じて、子どもたちをはじめ参加者は、水や環境について知識を深めることができました。このような機会を増やし、正しい理解を身に付けた人たちが行動を起こしていくことが、村の抱えている問題の改善に繋がっていくと考えます。

■ 7月23日 LIXIL VIETNAMでの活動報告と工場見学

フービン村は、第1日目に活動したディッグザオ村から車で約20分のところに位置しています。2011年7月と2012年2月に水の環境授業を実施した地域で、STTが支援を行いつつ、青年団が主導して自主的な環境活動を継続しています。特に農薬による水質汚染が問題になっていることから、LIXILも土壌中の農薬濃度の測定キットの提供を行っています。

活動2日目の23日は、フービン村の子どもたちと青年団76名が、ベトナムの首都ハノイ市にあるLIXIL VIETNAMの工場を訪問し、2011年の活動成果と2012年の活動計画について発表しました。LIXIL VIETNAMからはHoa副社長や松本生産部長をはじめ約20名が参加しました。

発表会では、青年団のメンバーを中心に6の集落が、1年間にわたって水源の水質調査を実施した結果や考察を報告しました。LIXILの環境教育をきっかけに、水の重要性に気付き実際に行動する動きが、地域全体に確実に浸透しています。また、自分たちの環境は自分たちで守るという意識も、活動を通じて高まっています。

発表の後はLIXIL VIETNAMの工場見学を行いました。ベトナムでは見学を受け入れる工場が少ないために、一般の人が工場内部に入ることは難しく、村では今回の見学を楽しみにしていたそうです。見学は6班に分かれ、各班にスタッフが3名ほどついて行いました。初めて目にする大型の設備に驚いたり、各工程での作業内容について質問したりしながら、日本発のモノづくりの様子を見学しました。

発表会の会場の様子

初めて見る設備に驚きの連続

■ 7月24日 BAJとともにフエ トゥイビュウ地区での活動

ベトナム中部にあるフエ市は、その建造物群が世界遺産に登録されるなど、国内外の観光客でにぎわう古都として有名です。また観光だけでなく、フエ市近郊では農業も盛んです。BAJは、貧困地域の人々の環境改善に取り組むとともに、農村部で有機農法の支援や地域づくりの活動を行っています。

中でもトゥイビュウ地区は、BAJが継続した活動を通して、特に住民と厚い信頼関係を築いている地域です。子どもたちへの環境教育や進学支援、農家の昔ながらの生活を観光客が見学する「エコツアー」の企画、地元の有機野菜の販売支援など、様々な方法で地域のコミュニティづくりに参画しています。

写真とテキストの関わりを探る

発表の様子

ワークショップ後の授業

第3日目になる24日は、トゥイビュウ地区の子どもたちや高校生や大学生のボランティア25名と、オリジナルテキスト「水について考え、調べてみよう」を使ったワークショップを行いました。まず、グループに分かれてテーマにするテキストのページを決めます。次に、事前に撮影した自分たちが環境活動をしている様子の写真から、ページの内容と関係するものを選びます。最後に、選んだページと写真を1枚の紙にまとめ、それらがどのように関係しているかを発表しました。テキストの内容をより身近なものとして理解し、水と自分たちの環境活動との関わりや、水を大切にするために生活の中でできることを考えられるようになることが狙いです。

このワークショップは同時刻にBAJスタッフによってホーチミンでも開催され、iPadを使って2つの会場をリアルタイムに接続して意見交換も行われました。都市部のホーチミンと農村部のフエの子どもたちを交流させることで、ホーチミンの子どもたちは昔ながらの暮らしに興味を持つようになり、フエの子どもたちは地元に残る生活や環境の価値に気付き、その素晴らしさに自信を持つことができます。ワークショップで自分たちと水との関わりを理解した後、LIXILスタッフが水の環境授業も実施しました。ワークショップと授業を組み合わせることで、子どもたちは水についてより深く学ぶことができたようです。

■ 7月25日 フエ トゥイビュウ地区の農家訪問

第4日目の25日はトゥイビュウ地区の農家を訪問し、18名の子どもたちとともに農家の水の使い方や野菜の育て方などを学習しました。トゥイビュウ地区には、自然と共存する昔ながらの農家の生活が残っていますが、急速な経済発展を背景にこのような生活は失われつつあります。地域に残る自然や暮らしの知恵を守り受け継いでいくために、BAJでは農家を訪問して暮らしを学習する活動を継続して行っています。

子どもたちの質問に答える農家の方

はじめに訪問した農家では、農作物の栽培に水道水を使用せず、井戸水を使用していました。水道水を使い続けると、塩素濃度が高いためか作物が育たなくなるそうです。また、雨水はタンクに貯めて洗い物などに使っていました。フエでは、ほとんどの農家で雨水を生活用水に利用しています。このように、限られた水を賢く使う方法を学んでいきます。

BAJでは、フエで栽培した有機野菜をインターネット通販の方法でホーチミンに販売する支援も行っています。インターネットを使って生産者と消費者を直接つなぐ販売方法は、ベトナム国内でも好評を得ています。水の使い方を見学した後、子どもたちはホーチミンに送る野菜のパッキング作業も体験し、地元の野菜がどのようにホーチミンに届くのかを学びました。この活動も前日と同様にiPadを使ってホーチミンに生中継され、ホーチミンの子どもたちは野菜の詰め方についてフエの子どもたちにアドバイスをしながら、生産現場の様子を学びました。

2軒目に訪問した農家では、有機栽培を行っている畑を見学し、実際に採れた野菜の試食や、この野菜を使った郷土料理の調理体験を行いました。その後、紙芝居サイズのテキストを使って、水の環境授業を行いました。子どもたちは、水を工夫して使っている農家を見学した後に、水が限られた貴重な資源であることを学習することで、その大切さについて実感を持って理解できたようです。

ホーチミンに出荷する野菜をパッキング

郷土料理の調理体験

【ベトナム ホアビン・ハノイ・フエ訪問の行程概要】

7月21日 LIXILスタッフ ベトナム 到着
7月22日 ホアビン省ディッグザオ村で環境授業・実習実施
7月23日 ホアビン省フービン村での活動の成果発表会とハノイLIXIL VIETNAM工場見学
フエへ移動
7月24日 フエ トゥイビュウ地区でワークショップ、環境授業実施(ホーチミンと中継)
7月25日 フエ トゥイビュウ地区の農家見学、環境教育実施

環境教育活動参加者

ホアビン省 ディッグザオ村 環境授業・実習 91名
フービン村から工場見学 76名
フエ トゥイビュウ地区 ワークショップ・環境授業 25名
農家見学・環境教育 18名
BAJ同行者 ブリッジ エーシア ジャパン
ベトナム事務所 Huynh Hue Tue(フィン ホゥイ トエ)
片山恵美子
東京本部 伊藤祥子
STT同行者 Seed to Table代表 伊能まゆ
LIXIL講師 CSR・環境経営推進部 川合和之、井上孝之
LIXIL VIETNAM講師 総務部Khuat Duy Son (グアット ズイ ソン)

■ ブリッジ エーシア ジャパン (BAJ) http://www.baj-npo.org/

1993年設立のBAJは、その名の通りアジアと日本の架け橋となって国際協力を行っています。ベトナムでは貧困層の子どもたちへの支援を中心に行い、環境教育については2002年ごろから準備を始め、ベトナム中部のフエ市で2004年から子どもたちへの教育を本格始動しています。プラスチックなどの有価物回収や、生活排水を直接川に流さないように浄化槽を設置するなど、BAJの実践的なサポートにより、現地の子どもたちが自ら考え行動する活動が広がっています。

■ Seed to Table (STT) http://seed-to-table.org/

STTは、2009年7月設立の日本のNPO法人で、ベトナムの人々と共に、地域の種、自然、そして文化を守り、自給と収入を改善するための経済基盤を整えながら、家族や友人と楽しく暮らしていけるようになることを目指しています。農法などの地域の知恵を記録し伝えることをはじめ、人々の出会いと話し合いの場をつくり、次世代を担うリーダーを育てながら、食と農と地域づくりに取り組んでおり、ハノイ北部ホアビン省はその活動の中核拠点です。

【LIXILのベトナム事業について】

LIXILグループでは、アメリカンスタンダードブランドの衛生陶器が、最初にベトナム市場へ進出しました。1996年にホーチミンで製造を開始すると同時に、販売もスタートしました。翌年には、INAXブランドの衛生陶器もハノイで製造販売を開始、現在ではこの2ブランドでベトナム国内シェアNo1の地位を築いています。2010年には水栓金具工場も稼動し販売を開始、さらに今年6月には、今後の成長が期待される電気温水器市場にも進出しました。

その他、建材の分野では、2008年からモザイクタイルを中心とした乾式外装タイルの製造販売を行っています。2013年秋には住宅用サッシ工場の稼動も予定しており、今後もベトナム国内における事業の拡大を推進していきます。

なお、今回の活動の中心となったLIXIL VIETNAMは、ベトナムにおけるINAXブランドの衛生陶器などの製造販売を行なっている現地法人です。

【ベトナム環境教育活動の考え方とこれまでの歩み】

2006年、LIXIL(当時のINAX)が、単に資金や物資の提供ではなく、現地の人に喜んでもらえ、未来につながる活動を支援するパートナーを探し、2007年から実績あるNPOと具体的な活動を開始しました。水回り製品を扱う企業としての蓄積を活かし「水」をテーマに、ベトナムの今後を担う子どもたちにとって本当に必要とされる教育の支援を目指しています。それは、「水が汚れるからゴミを川に流さないようにしよう」ではなく、「何が原因で川が汚れるのかを理解して、どうしたらよいかを子どもたち自身が考える」ための教育です。今後も、この考えに基づき、BAJ、STTとLIXIL VIETNAMの現地スタッフとともに、現地の実情に沿った、実践的な環境教育を継続しています。

主な活動記録

2007年 BAJ、セーブ・ザ・チルドレン ジャパン(SCJ)と活動を開始 (3ヵ年契約)
オリジナル教育テキストの作成 (4月)
INAX VIETNAM Co.,Ltd. ※1スタッフの講師養成教育、
政府機関・学校関係者への説明実施
ハノイ北部イエンバイ、フエで学校関係者および子どもたちへの環境教育開始 (6月〜8月)
2008年 エコプロダクツ国際展(ハノイ)にイエンバイやフエの子どもたちを招待
INAX VIETNAM Co.,Ltd. ※1の工場見学(3月)
イエンバイ、フエで環境教育実施 (6月)
イエンバイ、フエ、ホーチミン、クイニョンで環境教育実施 (12月)
2009年 イエンバイ、フエ、ホーチミンで環境教育実施 (7月)
2010年 BAJ、STTと活動を開始フエ、クイニョンで環境教育実施。
INAX VIETNAM TILE Co.,Ltd. ※2のタイル工場見学 (1月)
ホアビン省ナムソン村、フエ、ホーチミンで環境教育実施 (7月)
2011年 ホアビン省ナムソン村、フエ、ホーチミンで環境教育実施 (1月)
ホアビン省フービン村、フエ、ホーチミンで環境教育実施 (7月)
ナムソン村住民による活動報告とINAX VIETNAM Co.,Ltd. ※1の工場見学 (7月)
2012年 ホアビン省フービン村、フエで環境教育実施 (2月)
ホアビン省ディッグザオ村で意見交換会実施 (2月)

※1 現LIXIL INAX VIETNAM Corporation

※2 現 LIXIL INAX Saigon Manufacturing Co.,Ltd.