2013年08月12日
住まいと暮らしの総合住生活企業である株式会社LIXIL(本社:東京都千代田区社長: 藤森義明)は、土とやきものの魅力や、ものづくりの心を伝える文化施設、INAXライブミュージアム(愛知県常滑市)の「世界のタイル博物館」企画展示室と、2階常設展示室内の特設会場にて、企画展『ラスター彩タイル 〜天地水土(てんちみずつち)の輝き』を、2013年9月7日(土)から2014年2月16日(日)まで開催します。
ラスター彩壷
スペイン、18-19世紀
「ラスター彩」とは、英語で「輝き」を意味する言葉“luster”に由来し、表面に金属的な光沢を持つ特殊な陶器や、その加飾技法を指します。ラスター彩を施したタイルは、霊廟や宗教施設(モスク)、宮殿など、イスラーム地域の神聖な建築の壁を装飾するために使われました。真っ暗な空間に光が差すとキラリと反射するそのタイルは、金や銀などの金属とは違う、厳かな光沢をたたえていました。
ラスター彩のやきものは、9世紀アッバース朝時代のバグダードやバスラ(現在のイラク地域)で始まったとされ、特に12世紀から14世紀にかけて、カシャーンを中心とする地域(現在のイラン)で、幾何学文様やアラビア文字、植物文様などを描いた光り輝くタイルが盛んにつくられました。それらのタイルは独特の金属的な輝きを持つだけでなく、イスラーム美術の特徴が体現され、イスラームの世界観、宗教観までもが反映されています。
ラスター彩タイル
イラン、13-14世紀
本展では、これまで日本では馴染みの薄かった「ラスター彩」に光をあて、「世界のタイル博物館」収蔵のコレクションからラスター彩タイルの逸品を展示します。また、これらのタイルが使われた空間を再現した展示ゾーンでは、ラスター彩独特の輝きによる光の効果を体感でき、その魅力の源泉を探ります。
2階の特設会場では、日本におけるラスター彩復元の第一人者であり、ペルシア陶器、正倉院三彩※1の復元など多大な功績を遺した、重要無形文化財保持者(人間国宝)故・加藤卓男(かとう たくお)氏と、氏の子息でペルシア陶技を継承する陶芸家 七代 加藤幸兵衛(かとう こうべえ)氏のラスター彩の作品を特別展示※2します。
※1:「三彩」とは、素地に直接、緑・茶・白・藍などの釉(うわぐすり)をかけて焼いた陶器。唐代の中国で盛んにつくられたものを「唐三彩」と呼び、唐三彩の影響を受けて日本でつくられたものを「奈良三彩」と呼ぶ。奈良三彩のなかでも、正倉院に伝わる優れた作品を「正倉院三彩」と呼ぶ。
※2:加藤幸兵衛の作品は、2014年1月18日から2月16日の期間のみ展示。
『ラスター彩タイル 〜天地水土の輝き』
Luster -Painted Tiles
−Glow of a Philosophy of Nature and the Universe
上:ラスター彩タイル イラン・14世紀
下:ラスター彩タイル イラン・13世紀
□ 1階企画展示室
「世界のタイル博物館」コレクションより・ラスター彩タイル 27点 ※イギリスやスペインでつくられたラスター彩タイルも展示します。
・ラスター彩陶器 3点
霊廟をイメージしたゾーンでは、ラスター彩タイル独特の輝きによる光の効果を体感いただけます。
□ 2階特設会場
・加藤卓男作品 3点
ラスター彩芥子文四方水指(高さ18.0cm×幅18.8cm×奥行18.5cm)
ラスター彩樹下人物文鉢(高さ8.0cm×幅20.0cm×奥行20.0cm)
ラスター彩花鳥文輪花鉢(高さ10.5cm×直径42.5cm)
・加藤幸兵衛作品 3点 ※2014年1月18(土)−2月16日(日)のみ展示
ラスター彩日輪草文方壷(高さ30.3cm×横20cm×奥行20cm)
ラスター彩姑姫文鳳首瓶(直径16.5cm、高さ30.5cm)
ラスター彩騎馬人物文大皿(直径44.6cm×高さ5.5cm)
加藤卓男 ラスター彩芥子文四方水指
幸兵衛窯 蔵、撮影:林達雄
□「イスラーム美術とラスター彩タイルの魅力」
日時:2013年11月16日(土)16:00〜17:30
講師:桝屋友子 〔東京大学東洋文化研究所教授〕
定員:40名/聴講無料/要予約
〔ますや・ともこ〕 長崎県に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科美術史学専門課程(当時)修士課程終了、
ニューヨーク大学大学院美術研究所博士号取得。専門はイスラーム美術史学。
□「ラスター彩陶をつくる」
日時:2014年1月18日(土)17:00〜18:30
講師:七代 加藤幸兵衛 〔陶芸家、公益社団法人日本新工芸家連盟 顧問〕
定員:70名/聴講無料/要予約
〔かとう・こうべい〕父は人間国宝の加藤卓男。岐阜県に生まれる。京都市立美術大学卒業。
造形的な作品で日展特選など多数受賞。加藤卓男のペルシア陶技を継承。
2013年7月、イラン国立博物館にて「大ラスター彩展」を開催。
<INAXライブミュージアム(LIXILグループ)について>
やきものの街常滑で、LIXILが運営する、土とやきものの魅力を発見し体感できる文化エリアです。大正から昭和にかけて、土管等やきもの製品の製造で活気付いた往時の常滑の面影を残す大窯と煙突を公開する「窯のある広場・資料館」や、世界の装飾タイルコレクションを展示する「世界のタイル博物館」など6つの館があります。土とやきものに触れる体験教室やワークショップ、展覧会の開催など、やきものの文化を今に伝えるための活動を、積極的に展開しています。