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【巡回企画展】
背守り 子どもの魔よけ 展
2014年3月7日(金)〜 5月20日(火)
LIXILギャラリー (大阪会場)

2014年02月21日

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2014年3月7日(金)〜5月20日(火)の期間、「背守り 子どもの魔よけ」展を開催します。 子どもの魔よけとして着物の背中に縫取られた「背守(せまも)り」、端切れをもらい集めて綴った「百(ひゃく)徳(とく)着物」。本展では、昭和の初めころまで子どもの無事成長を願い作られていた祈りの造形の様々を通して、かつての衣文化の豊かさを伝えます。

展覧会のみどころ

子どもの健やかな成長を願い、母親が着物の背中に飾り縫いを施した「背守り」。背に縫い目のない子どもの着物は背後から魔が忍び込むとされ、昭和の初めころまで魔よけとして付けられていました。シンプルな縫い取り、刺繍、アップリケのような押絵などそれらの造形は実に多彩です。百人から端切れをもらい集めて綴った「百徳着物」や、蓑亀・鶴など縁起物の図柄の「守り袋」、童子や蝙蝠など意匠の凝った「迷子札」も、同じ意味合いを持ち、子どもたちが身に付けるものとしてつくられました。そのどれもが、生育や安全が十分でなかった時代の、子どもを守るための母の祈りを形にしたものといえます。
本展では、日常的に着物を着ていた昭和初期ごろまで日本各地で広くみられた「背守り」を代表とする祈りの造形を紹介します。会場には、背守りが施された着物や百徳着物ほか周辺資料も含め約110点の展示資料が並ぶ予定です。
さらに、写真家・石内都が2013年紫綬褒章受賞後初の仕事として本展のために撮下ろした写真もご覧いただきます。父母の着物の仕立て直しであることが多い子どもの着物。石内の写真はその時間の積み重なり、そして造形美の奥にある目には見えない母の祈りまでも写し取ります。
子に対する母の気持ちは今も変わりありません。着物を身にまとった時代、母たちの愛情溢れる手仕事を是非ご覧ください。

<主な展示>

● 背守りのいろいろ

背守りのなかで最もポピュラーな「糸じるし」(写真1)。背縫いのない子どもの着物の背に縫い目をつけて魔よけとしました。布細工の一種である「押絵」(写真2)は立体アップリケ。高度な裁縫技術が必要であるため、それをつくることは母親の誇りでもあったのでしょう。 創意工夫がなされた様々な背守りには母親の愛情がたっぷり注がれています。背守りが施された着物約35点が展示予定です。

● 百人の徳を集めた百徳着物

子育ての守護神・鬼子母神を祀る金沢の真成寺に奉納された子どもの着物のうち、「百徳着物」は、子育ちのよい家や長寿の年寄りから端切れをもらい、百枚を綴って子どもに着せると丈夫に育つという風習の中でつくられました。多くの人々から徳をいただき、そのご加護によって無事な成長を願ったのでしょう。今回真成寺所蔵の「百徳着物」4点(重要有形民俗文化財)を展示。多彩な端切れとその組合せの妙に見飽きることはありません。百徳着物の背にさらに背守りが施されているものもご覧いただけます(写真3)。

● かわいい子どもを守る小物たち

子どもの帯に下げられていた巾着型の守り袋(写真4)。もともと大人が煙草や小銭などを入れて携帯するものでしたが、江戸後期になって子どもの守り袋として利用されるようになりました。明治・大正時代には手の込んだ押絵細工やフリルで縁取りしたものも流行します。 手のひらに収まるサイズの「迷い札」は、今もわが子に持たせたくなる愛らしいマスコット。小さいながらも創作手芸の技と美意識はどれも見事なものです。白い布があてられた裏側には住所氏名、親の名前が記されています。

● 現代に引き継がれた背守り・百徳着物

このようなかつて日本にあった衣文化を今に継承する女性お二人の作品をご覧いただきます。背守り収集家でもある鳴海友子さんは孫の誕生を機に現代版の「背守り」をつくり始めます。それはご自身で染めたTシャツに背守りをつけるというもの。孫への祈りが込められたオリジナリティ溢れる作品です。三瓶清子さんは金沢の真成寺で百徳着物と出会い、それ以来ライフワークとして「百徳着物」を作り続けています。三瓶さんの母が残した膨大な量の端切れ、それを大切にしてきた母の思いを百徳着物に受け継ぎます。約700枚もの端切れが用いられた百徳着物は圧巻です。

写真1

写真2

写真3

写真4

<写真1>
藍染の木綿地に松竹と鶴亀を散らした男児祝い着。長い紅白の糸じるしが縫い取られている。明治時代。
丈82cm、裄 31cm 所蔵:三瓶清子
<写真2>
派手な着物に負けじとつけられた柿の押絵。 大正時代。 重要有形民俗文化財 丈54cm、裄30cm 所蔵:真成寺
<写真3>
星形の刺繍を背守りにした百徳着物。明治時代。重要有形文化財 丈62cm、裄30cm 所蔵:真成寺
<写真4>
隠れ蓑と呼ばれる巾着。これを身に付けることで魔物から身を守る。明治末〜大正時代。 縦20cm 所蔵:日本玩具博物館

写真撮影:すべて益永研司

LIXILギャラリーからのお知らせ

LIXILギャラリーの大阪会場は、2013年8月25日(日)より大阪・うめきた「グランフロント大阪」タワーAの12階に移転オープンさせていただくことになりました。
今後とも変わらぬご愛顧のほど、何卒宜しくお願い申し上げます。

展覧会概要

【会  期】
2014年3月7日(金)〜5月20日(火)
【開館時間】
10:00〜17:00
【休 館 日】
水曜日
【会  場】
〒530-0011
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪 タワーA 12F

*南館2階 タワーAオフィス入口より、9階でエレベーター乗り換え、12階へ

【入 場 料】
無料
【企  画】
LIXILギャラリー企画委員会
【制  作】
株式会社LIXIL
【協  力】
三瓶清子、真成寺、鳴海友子、日本玩具博物館
LIXILギャラリー巡回企画展はこちら

■ 関連企画のご案内

講演会「母の手仕事、背守りの心」

講 師:
鳴海友子(藍染め作家・背守り収集家)
日 時:
2014年4月27日(日)14:00〜15:30
会 場:
LIXILショールーム大阪セミナールーム
(大阪市北区大深町4−20 グランフロント大阪タワーA 11階)

参加無料、要申込、先着順(TEL: 06-6733-1790  e-mail:xbn@lixil.co.jp

■ 新刊LIXILブックレットのご案内

LIXIL BOOKLET『背守り 子どもの魔よけ』

(78ページ/3月上旬発売予定、税込価格1,890円)