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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2015年02月06日

金沢の町家 活きている家作職人の技

Machiya: Kanazawa's Traditional Townhouses
The Living Skills of Townhouse Craftmen

会期:2015年3月6日(金)〜5月19日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1: 旧涌波家住宅主屋(金沢市指定文化財)

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2015年3月6日(金)〜5月19日(火)の期間、「金沢の町家 活きている家作職人の技」展を開催します。 建築における伝統技術がいかに保存され継承されているのでしょうか。本展では、その実例を加賀百万石の城下町、金沢の町家から探ります。

│開催概要│

「金沢の町家 活きている家作職人の技」展
Machiya: Kanazawa's Traditional Townhouses
The Living Skills of Townhouse Craftmen

会 期
2015年3月6日(金)〜5月19日(火)
開館時間
10:00AM〜5:00PM 
休館日
水曜日(祝日は開館)
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
金沢市・金沢職人大学校、長田和明、畳 立野、出口昭、中村康、
西田守男、表具 錦芳堂、藤田左官、安田正太郎

│展覧会の見どころ│

城下町の風情漂う金沢。幸いにも戦災や震災に遭うことがなかったこの町では、今も古い町家を数多く見かけることができます。町家とは、古くからある都市住宅のことで、住まいと生業が共存したかつての日本特有の暮らしの場でした。日常的な手入れや修復は地域ごとの家作職人が担い、一軒に凝縮されたその知恵と工夫は伝統技術の宝庫ともいえます。職人の世界も様変わりしていく中で、金沢ではこのような豊かな町家をはじめとする重要な歴史的資産があることにより、それらの修復や再利用を通して職人たちが育成され、また技術も受け継がれています。

本展では、町家の家作に必要な技術のうち、七つの技−大工・石工・瓦・左官・畳・建具・表具−とそれぞれの職人たちにスポットをあて、道具、材料、工程サンプル等の実物資料ほか職人たちのインタビュー、修復の現場レポート、映像を含む約170点から、金沢における伝統技術の保存・継承のあり方を読み取っていきます。七種それぞれの伝統技術に欠かせない道具が一堂に会するこの機会は同展の大きな見どころのひとつです。

修理しながら百年持つ家、それが当たり前だった家づくり。本展がそのような日本の伝統建築を支える職人の「活きた」技に出会う場となり、それを受け継ぐべくこれからを考えるきっかけになれば幸いです。

写真2

写真3

写真4

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●主な展示

□七種の伝統技術と職人コーナー:大工・石工・瓦・左官・畳・建具・表具

七種の伝統技術を伝える道具や材料、また工程サンプル等を展示します。道具は七種七様。自ら手作りする道具もあります。工程サンプルからは仕事の緻密さが分かります。 また職人たちのインタビューパネルからは彼らの仕事との向き合い方、さらには意気さえ伝わります。

【登場する職人の紹介】
大工:安田正太郎さん(1963年生)

社寺や古民家、町家の修復を手がける。最近では金沢城の「河北門」、「橋爪門」復元の棟梁を務めた。

石工:出口昭さん(1942年生)

金沢城の「河北門」「橋爪門」の石垣や敷石の復元工事に携わった。3人の息子が石工の跡を継ぐ。

瓦:長田和明さん(1948年生)

18歳で家業の瓦屋4代目を継ぐ。現在は親方として石川県内外の寺社仏閣の修復をはじめとした瓦葺きに携わる。

左官:中村康さん(1948年生)、藤田秀紀さん(1974年生)

中村さんは中学卒業後、金沢の石動左官工業所(現・イスルギ)に入社。公共施設などの大規模な現場を中心に、文化財の修復にも携わった。藤田さんは中村さんの世話を受け伝統技術の資格を持つ左官職人となっている。

畳:立野善吉さん(1932年生)、克典さん(1961年生)

善吉さんは畳 立野7代目。13歳から畳職人の道に進む。息子の克典さんは8代目として兼六園の成巽閣(せいそんかく) の畳の表替えなどを手がける。

建具:西田守男さん(1943年生)

中学卒業後に建具の家業を継ぐ。建具はもとより、茶室も含めた自邸の増改築を自ら手がけた。

表具:永嶋明さん(1949年生)

修行時代は糊を炊くことからスタートした。表具師の仕事の中でも屏風を好み制作している。

*金沢市は1996年に「金沢職人大学校」を創設しました。木造建築物に関わる伝統技術の伝承と人材育成を目的としています。本展で紹介する職人たちも多くがここで伝統技術を学びその技術を次の世代に伝えています。

□修復の現場レポート

長さ約270cmの旧平尾家住宅表門(金沢市指定文化財)の柱を展示します。そこに施された埋木やホゾの繕いなど、直に修復の痕跡をご覧ください。この堂々とした1本の柱とともに、過去に実施された修復の様子を技術ごとに写真と解説付きで紹介します。伝統の技がいかに家を蘇らせるか。格闘する職人と材との対話が聞こえてくるようです。

写真1:
江戸末期と推定される町家だが明治期の姿で平成15年に復元整備された。凛とした佇まいの中に手技による修復の痕をみることができる。現在は1階部分が「ひがし茶屋休憩館」(金沢・ひがし茶屋街)として活用されている。
写真2/大工:
釿(ちょうな)。部材の表面をはつる道具。刃を自分の足元へ振り下ろして作業するため危険が伴うので、自分の身体に合った曲りの柄を各自が工夫して付ける。安田さんのこの釿は親方から譲られたもの。(所蔵:安田正太郎)
写真3/畳:
糸筒。畳表を丸めて中に糸を仕込み、使用する針は待ち針、縁を止める「縁引き」など刺す、仕事中の座右の小道具。
所蔵:畳 立野
写真4/建具:
クデゴシと型。クデゴシは、障子の桟や天井の桝目模様の桟の合わせ目を削るノミで、刃の幅や角度がさまざまある。
これらは、建具師が細工に応じて考案してつくった型と一緒に用いる。所蔵:西田守男
写真5/表具:
打ち刷毛。掛け軸の裏打ち用に用いられる(シュロの毛)。刷毛は表具師にとって一番大事な道具。所蔵:表具 錦芳堂
写真6:
旧平尾家住宅表門の柱。修復の調査、修理を終えたもの。埋木の痕が見られる。

撮影すべて:尾鷲陽介

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 金沢の試み 町家にみる伝統技術の継承

日 時
2015年4月25日(土)14:00〜15:30
講 師
坂本善昭(元金沢職人大学校専門員、ピーセクション代表)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料 *要予約、定員70名
予約方法
電話もしくはホームページから
内容
路地を歩けば、町家に出会う。金沢の町の魅力でもある町家を金沢市は20年くらい前から積極的に守ろうという取り組みがなされてきました。そのひとつが金沢職人大学校です。その準備段階から携わってこられた坂本氏が今回の講師です。家作の職人たち、そして町に住まう人々が身近な町家を通して先達の技の足跡を発見できる楽しさとは?自らもその楽しさを味わったおひとりとして語っていただきます。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『金沢の町家 活きている家作職人の技』

3月上旬発売予定(76ページ予定、本体価格1,800円)