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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2015年05月15日

鉄道遺構・再発見

REDISCOVERY - Legacy of Railway Infrastructure

会期:2015年6月5日(金)〜8月18日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1:士幌線・第四音更川橋梁(北海道)

士幌線 しほろせん は、戦後電源開発で 糠平 ぬかびら ダムが建設された影響もあり、昭和62年に全線が廃線となった。 音更川 おとふけがわ の支流をまたぎ、山裾を縫っていくため路線は66の高架橋で繋がれた。うち44がコンクリートアーチ橋である。この第四音更川橋梁は、1938年に建設され、全長91.24m。橋梁上の四角のでっぱりは鋼製の桁橋の受けで、鋼製桁橋は撤去されることが多い中、今も現存している。

撮影:西山芳一

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2015年6月5日(金)〜8月18日(火)の期間、「鉄道遺構・再発見」を開催します。
全国に分布し、その置かれている立場も様々な廃線跡。本展では、次代に向けて鉄道遺構を貴重な資産として受け継いでいくため、そこから読み解くさまざまな魅力を再発見する旅へと誘います。

│開催概要│

「鉄道遺構・再発見」
REDISCOVERY - A Legacy of Railway Infrastructure

会 期
2015年6月5日(金)〜8月18日(火)
開館時間
10:00AM〜5:00PM
休館日
水曜日、8/12−16
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
足尾歴史館、伊東孝、岡本憲之、産業考古学会(鉄道分科会)、
須永秀夫、中芸地区森林鉄道遺産を保存・活用する会、天賞堂

│展覧会の見どころ│

日本初の鉄道が正式に開通したのは、明治5年(1872)。その後、物流の主役を担うべく、全国に鉄道網は張り巡らされました。様々な地理的条件を克服しながら、山にトンネルを通し、河川に橋をかけるなど、レールを繋ぐ創意工夫は「道なき場所」に鉄道を通す技術の結晶であり、それぞれの場所や地域に合わせてデザインされた創造的叡智ともいえます。時を経て、物流手段の多様化やエネルギー効率などの点からすでに役割を終えた鉄道も多くなる中、人々の経験や知恵を次代に繋げる存在として保存され、用途を変えて地域で活用されている例も少なくありません。
本展では、路線をネットワークとして俯瞰する視点で、廃線路になった後も新たな価値を付加された鉄道遺構14件を厳選してご紹介します。それらを土木写真家・西山芳一氏によるダイナミックな写真の数々で披露し、迫力と存在感を存分に感じる遺構の雄姿をたっぷりとご覧いただきます。なかでも、利活用の経緯や現状など秘めたる物語が多い 魚梁瀬 やなせ 森林鉄道、足尾鉄道、横浜臨港貨物線は当時の古写真や一部映像も交えて大きく取り上げます。その他の事例も含め、当時の路線図とともに土地の背景を知ることで、遺構を再認識することができるでしょう。さらに、近代ならではの素材の使い方や、構造物の形態や意匠、表情の相違などにも注目していただくと、個々の遺構の多様性も感じられます。
本展が当時の技術や歴史を内包した鉄道遺構の価値や今後の在り方を改めて見つめなおすきっかけになれば幸いです。

写真2

写真3

写真4

写真5

●主な展示

<山師のいた記憶 高知県・魚梁瀬森林鉄道>

銘木、 魚梁瀬 やなせ 杉で知られる森林資源に恵まれた高知県の中芸地区では、明治44年木材搬出用に国内3番目となる森林鉄道が開通しました。山間から海に面した貯木場まで、ぐるりと一周を繋ぐ鉄道は、林業の繁栄をもたらしただけでなく、地域で暮らす住民たちの唯一の交通機関でもあり、生活物資から文化までも運んだかけがえのないものでした。ここには橋梁や 隧道 ずいどう (トンネル)など18か所の貴重な遺構が現存し、平成21年には国の重要文化財に指定されました。展示ではその中から、「明神口橋」(写真2)や「五味隧道」などいくつかを見ていただくとともに、古写真や映像などで当時の軌道の様子も振り返ります。

<橋梁デザインの宝庫 栃木県・足尾銅山の鉄道施設>

昭和48年に閉山になった足尾銅山では、銅山内外をつなぐように鉄道が走り、周辺には当時最新の技術が結集された様々な形の橋梁がかけられました。これらの遺構は、世界遺産に向けて現在調査が進められています。
ここでは、著名なアメリカの橋梁技術者が設計した「第二渡良瀬川橋梁」(写真3)やドイツからの輸入橋梁「古河橋」、トラス橋脚が珍しい「第一松木川橋梁」ほか、各種橋梁をご覧いただきます。橋のバリエーションに目を凝らすと、足尾が橋の質や数量や技工などの面で先進地であったことが伝わってきます。

<都市に刻まれた開港の歴史 神奈川県・横浜臨港貨物線>

横浜港拡張に伴い、港湾関係の業務施設が残るエリアは整備され、さらには1984年の「みなとみらい21」の開発事業として、鉄道の廃線跡以外にも、横浜船渠のドックや横浜税関の赤煉瓦倉庫などの関連施設を保存する再開発が行われました。行楽客が行き交う汽車道には軌道が残り、臨港線跡を利用した高架橋は現在歩道橋として活用されています(写真4)。都市に残る大規模な廃線跡は全国にも珍しく、街並みと一体となって景観に彩りを加えています。

<機能と素材を堪能する鉄道遺構>

鉄道遺構の中には、単体の構造物として見ても稀有な事例や美しいものがあります。1000mの遊歩道になった「大日影トンネル(山梨)」(写真5)、清水港にまるでオブジェのように佇む貨物用クレーン「テルファー(静岡)」、さらには、場所や形を変えて、第三の人生を生き続ける「霞橋(神奈川)」や「茅野の跨線橋(長野)」などをご紹介します。
本展を見て現地を訪れると、また新たな感動や発見ができるものばかりです。

写真2:
魚梁瀬森林鉄道・明神口橋。昭和4年建設。下路式の鋼製単トラス桁橋、全長43.2m。開通当初はヒノキ材で建造されたが、機関車の導入に伴い、昭和4年に現在の鉄骨トラス橋に架け替えられた。
写真3:
足尾鉄道・第二渡良瀬川橋梁。現在は、わたらせ渓谷鐡道の橋梁として使用されている。大正元年竣工。ピン結合のプラット・トラス2連から成り、足尾鉄道の中では最長の橋梁。足尾町の歴史的橋梁を代表する橋のひとつ。
写真4:
山下臨港線のプロムナード。2002年に完成。象の鼻パークに建つコンクリート製の高架橋で、臨港線跡に造られた遊歩道。
写真5:
中央本線・大日影トンネル。中央本線の時間短縮化などの新トンネル建設に伴い、平成9年に廃止隧道となった。平成19年に遊歩道として公開。ここは、それまで使用されていたレールも敷かれたまま、距離標や勾配標、ベンチマークなどの鉄道標識も現存している。

撮影:すべて西山芳一

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 鉄道遺構・第二の人生ものがたり

日 時
2015年7月25日(土)14:00〜15:30
講 師
伊東 孝(産業考古学会会長・元日本大学教授)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料 *要予約、定員70名
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
ひとつの使命を終えた鉄道遺構に新たな活路があるとすれば?土木史を通じて長く日本の近代土木遺産に注目してこられた伊東氏が、鉄道遺構の「第二の人生」について、その在り方や価値の見出し方、また課題にも触れていただきながら語っていただきます。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『鉄道遺構・再発見』

6月上旬発売予定(76ページ予定、本体価格1,800円)