2016年02月10日
住宅・建材産業に関する調査・研究及び、人材育成等の事業に対し助成・支援する 公益財団法人LIXIL住生活財団(所在地:東京都江東区、代表:理事長 潮田洋一郎、以下:LIXIL住生活財団)は、同財団の管理する環境技術研究施設「メム メドウズ(Memu Meadows)」(北海道広尾郡大樹町)において、オスロ建築デザイン大学(ノルウェー)設計による次世代サステナブル住宅「INVERTED HOUSE」が竣工致しました。
「INVERTED HOUSE」は、LIXIL住生活財団が主催し、次世代のサステナブル住宅の技術を模索・検証し、社会にその技術を発信する「第5回LIXIL国際大学建築コンペ」において、「House for Enjoying the Harsh Cold─厳しい寒さを楽しむ家」をテーマに設計され、最優秀賞を獲得した作品です。
オスロ建築デザイン大学(ノルウェー)設計「INVERTED HOUSE」
「INVERTED HOUSE」は、高さの異なる床、傾きの異なる屋根を持ち、それらによって環境が調整されることで、寒さと季節の移ろいを感じることができる家となっています。主要な構造である互いに交差するふたつの壁が、4つの性質の異なる空間をつくり出し、料理、食事、入浴、就寝等すべての生活は屋外で行われ、屋内の居室は予期せぬ悪天候から避難するために作られています。
4つの空間は、冬には雪を集める庭となる“Garden Room”、主室である “Outside Living Room”、急勾配の屋根によって、強い風から守られた“Room for Cooking”、そして最も外部環境から守られた部屋“Inside Room”と名付けられ、それぞれが季節によって異なる性質を持っています。屋内の空間は、冬場は最も温かい空間となり、夏場は暗く、最も涼しい空間となり、屋外の空間は、冬には最も厳しい空間となり、夏には最も快適な空間となります。
「INVERTED HOUSE」の竣工により、現在「メム メドウズ」には、大学生が設計した住宅が5棟となりました。これらの住宅は、今後“次世代サステナブル住宅”として効果検証を続けていきます。
<参考資料>
指導教官:
Neven Fuchs(ネヴン・フッチ)准教授/Thomas McQuillan(トーマス・マックィラン)教授
Raphael Zuber(ラファエル・ズーバー)客員教授
「INVERTED HOUSE」は、“厳しい寒さを楽しむ家”という一見矛盾するようなテーマのもとに建設されました。4つの壁を外部環境に対し開き、寒さと季節の移ろいを受け入れる家として提案され、料理、食事、入浴、就寝等すべての生活は屋外で行われ、屋内の居室は予期せぬ悪天候から避難するために作られています。
・季節によって性質を変える4つの空間
まず人びとは交差する壁によってつくられる“Garden Room”と呼ばれる第一の部屋から建築に近づきます。この庭は冬には雪を集め、囲われた雪は壁によって守られ春先まで残り続けます。扉を潜ると、この家の主室である “Outside Living Room” に辿り着きます。床の一連の段差は人びとを暖炉に誘い、大きな屋根は周辺の豊かな環境や夕日への繋がりを作ります。隣接する“Room for Cooking”は急勾配の屋根によって、強い風から守られます。交差する壁に沿って細い廊下を進むと、“Inside Room”という最も外部環境から守られた部屋に辿り着きます。空間は細く、暗く、暖炉によって暖められます。 これら屋内と屋外の空間の性質は季節によって変化します。屋内の空間は、冬場は最も温かい空間となり、夏場は暗く、最も涼しい空間となります。反対に、屋外の空間は冬には最も厳しい空間となり、夏には最も快適な空間となります。
・交差する壁と長い屋根がつくり出す、外部環境を楽しむ体験
“Inside Room”にかかる長い屋根は西と北西から吹き付ける強風から空間を守り、壁の反対側にある“Garden Room”に雪を集めます。交差する壁は南と西に面し、影をつくり、雪を長持ちさせます。寝室は東に面し、日の出を楽しめ、西からの冷たい風から部屋を守ります。“Outside Room” は西に面し、日の入りを楽しめます。
“Inverted House”は地面の上に水平に広がる建築として設計されており、このコンセプトをより明確なものとするために、周辺の地面を切り開き、水平な地盤をつくっています。建築は周辺を取り囲む柵に対し角度を持って配置されることで、敷地境界からも切り離されます。
1.参加大学 11カ国・12校 ※◎印3大学が4月21日の公開審査会に進出。
◎Ecole Nationale Supérieure d'Architecture de Paris La Villette/パリ・ラ・ヴィレット建築大学(フランス)
Politecnico of Milan/ミラノ工科大学(イタリア)
◎The Oslo School of Architecture and Design/オスロ建築デザイン大学(ノルウェー)
Superior Technical School of Architecture of Madrid/マドリッド高等建築大学(スペイン)
Istanbul Technical University/イスタンブル工科大学(トルコ)
Yale University /イエール大学(アメリカ)
Universidade de Sao Paulo/サンパウロ大学(ブラジル)
The University of Hong Kong/香港大学(香港)
Seoul National University/ソウル国立大学(韓国)
◎Chulalongkorn University/チュラロンコン大学(タイ)
Tokyo Institute of Technology/東京工業大学(日本)
Tokyo University of Agriculture/東京農業大学(日本)
寒冷地における次世代型サステナブル住宅の提案を、世界11カ国12大学より招待形式にて募集。一次審査(書類審査)で上位3大学を選出。3大学による公開審査会を実施し最優秀賞を選出する。
最優秀賞(1点)―――― 15,000USドル(デザイン費を含む)
優秀賞(2点)――――― 3,000USドル
※最優秀作品は、北海道大樹町「メム メドウズ」敷地内に実作として建設される。