2016年02月10日
文字の博覧会
−旅して集めた“みんぱく”中西コレクション− 展
A Treasury of Written Characters:
The Nakanishi Collection Amassed from World Travels at the National Museum of Ethnology
会期:2016年3月4日(金)〜5月17日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)
写真1:シリア文字 Syriac script
手書きの聖書。16世紀。シリア文字は1世紀から9世紀頃まで、古典シリア語を表すために使われた
文字で、古代都市エデッサ(現在のウルファ/トルコ)を中心とする地域で使われた。
所蔵:国立民族学博物館
撮影:佐治康生
「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2016年3月4日(金)〜5月17日(火)の期間、「文字の博覧会−旅して集めた“みんぱく”中西コレクション−」展を開催します。
人類にとって最大の発明のひとつとされる文字。その奥深さに魅せられた中西亮(あきら)氏は世界でも稀有な文字ハンターとして多くの文字資料の収集をしました。本展では、“みんぱく”こと国立民族学博物館に収められた「中西コレクション」を中心に世界の様々な文字の魅力に迫ります。
│開催概要│
「文字の博覧会 −旅して集めた“みんぱく”中西コレクション−」展
A Treasury of Written Characters--The Nakanishi Collection
Amassed from World Travels at the National Museum of Ethnology
http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003419.html
│展覧会の見どころ│
現在、世界中には数千の言語があるとされていますが、文字の種類はそれほど多くはありません。すでに使われなくなった文字も含め300ほどと考えられています。それらは主に、エジプト文字、くさび形文字、漢字の3つを起源として発達してきました。文字は音や意味を形にするだけでなく、字形独自の不思議さや美しさが表れた各民族の文化の結晶とも言えます。
京都にある中西印刷株式会社の6代目、中西亮氏(1928−94)は未知なる文字への探求心から25年の間に100を超える国々を旅して3,000点近くの文字資料を収集しました。亡くなるまでに集めた文字は95種類にも達し、現在、これらの資料は国立民族学博物館に「中西コレクション」として所蔵されています。
本展では、そのコレクションを中心とした世界の文字資料約80点を、中東・欧州文字文化圏、インド・東南アジア文字文化圏、漢字文化圏(東アジア)などのコーナーに分けてご覧いただきます。貴重な手稿からは豊かな文字の多様性や人々の創造性が伝わってきます。また、書写媒体に注目すると、竹筒や椰子の葉、樹皮、布、紙、粘土板など様々なものに書かれており、素材や筆記具の違いが文字の形に影響を与えたことが分ります。中西氏については膨大な旅のアルバムから一部を紹介し、同氏の文字収集にかける情熱に触れていただきます。
本展をとおして多彩な文字の世界をお楽しみいただければ幸いです。
写真2
写真3
写真4
写真5
写真6
●主な展示
<中東と欧州の文字>
古代都市で生まれ現在も使用されている文字は、西アジアやヨーロッパなどに多く存在しています。ヘブライ文字は、現在のイスラエルに当たる地域で1世紀前後に作られました。その後国とともに滅びましたが、1948年にイスラエル共和国が成立すると公用語として復活します(写真2)。同じく中近東でイスラム文化の国々はアラビア文字を使用しています。それはイスラム教の聖典「コーラン」を記すただひとつの文字であるため、広く世界に広がりました。3000年以上の歴史があるギリシャ文字は、古代ギリシャ文明の頃に用いられた文字体系がほぼそのまま今も使われています。そのギリシャ文字が元になって生まれたのがラテン文字です(写真3)。ラテン人が造った都市国家ローマは、その後巨大帝国となり、文字も西ヨーロッパの隅々にまで広がりました。現在では、多くの国の様々な言葉を表す文字として世界中で使われています。ここでは、歴史的に貴重で美しい手写本の数々をご覧いただけます。
<インドと東南アジアの文字>
多民族国家のインドでは、州によって言葉や文化が大きく異なります。その中から基本となるヒンディー語を表すデーヴァナーガリー文字や南部タミルナードゥ州で使われるタミル文字(写真4)などを紹介します。世界一の多文字国家といわれる一端をご覧ください。
東南アジアの文字は、インド系文字をさらに発達させたもので、いずれも丸いカーブに特徴があります。インドネシアのスマトラ島で用いられるバタク文字は、竹筒(写真5)や樹皮に書かれることが多く、文字以外の部分には動植物の見事な装飾が施されています。
<漢字文化圏(東アジア)の文字>
少しずつ形を変えながらも、古代文字が現在まで使われているのは漢字だけです。ここでは日本で梵字と呼ばれる
<中西亮の文字の旅>
中西氏の文字を訪ねる旅の様子は、当時のアルバムで披露します。そこには各地の写真の他、手書きの地図や工程表も書き添えられ、新聞や切手、紙幣までも貼り込むなど旅で出会うあらゆる文字を収集していたことが分かります。
【写真キャプション・クレジット】
所蔵:すべて国立民族学博物館、撮影:すべて佐治康生
│関連企画のご案内│
〔講演会〕 文字学の楽しみ
│新刊 LIXILブックレットのご案内│
LIXIL BOOKLET 『文字の博覧会 −旅して集めた“みんぱく”中西コレクション−』
3月上旬発売予定(86ページ予定、本体価格1,800円)
構成案(予定) 撮影:佐治康生
【PART1】古都の手写本
【PART2】文字の系譜
【PART3】東南アジア、インドの文字
【PART4】漢字文化圏の文字
執筆者:八杉佳穂(国立民族学博物館名誉教授)、西尾哲夫(国立民族学博物館教授)
インタビュー:永原康史(多摩美術大学教授)、浅葉克己(アートディレクター)