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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2016年05月11日

水屋・水塚
−水防の知恵と住まい− 展

Mizuya-Mizuzuka "Shelter on Elevated Ground":
Traditional Flood Prevention Wisdom

会期:2016年6月3日(金)〜8月23日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1:辻邸の水屋・水塚 (岐阜県大垣市米野町)
洪水常襲地帯であった木曽三川流域の輪中にある。輪中とは堤防に囲まれた集落のこと。辻邸の水屋は大正15年に建てられた。この地域は「伊吹おろし」の季節風が激しいため、風雨から保護するため、土壁を板張りにしている水屋が多いのが特徴

撮影:大西成明

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2016年6月3日(金)〜8月23日(火)の期間、「水屋・水塚 −水防の知恵と住まい−」展を開催します。
かつて頻繁に洪水に見舞われた地域では、 水屋・水塚 みずや・みずづか を代表とする住まいが身を守る避難場所として建てられ、地域独特の景観をつくっています。本展は、全国の主な洪水常襲地帯に残る水防建築類の写真を中心に、関連の模型、農具などを含め約60点を展示します。人々の知恵を生かした「河川伝統技術」による水防建築をとおして、川とともに生きてきた日本人ならではの住まい方を再考します。

│開催概要│

「水屋・水塚 −水防の知恵と住まい−」展
Mizuya-Mizuzuka "Shelter on Elevated Ground":
Traditional Flood Prevention Wisdom

会 期
2016年6月3日(金)〜8月23日(火)
開館時間
10:00〜17:00 
休館日
水曜日、8/12〜17
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
日本大学理工学部 海洋建築工学科 親水工学(畔柳・菅原)研究室、
河合孝、海津市歴史民俗資料館

│展覧会の見どころ│

人の背を越すほどに積み上げられた石垣や盛り土を「 水塚 みずづか 」、その上に建てられた蔵を「 水屋 みずや 」といいます。これらは近年の治水整備が整う以前の水防建築を代表する例です。人、食物、大切な家財道具などを避難させ守ってきました。川の恵みを受けつつも、常に洪水の危険に曝された地域には、川に対して柔軟にふるまう災害文化が築かれました。それは巨大な防壁とは異なり、被害の軽減を目的とした先人たちの経験や知識に基づく、地域内の自助共助の策だったのです。
本展では、日本大学理工学部畔柳研究室での約15年に及ぶ水害地帯の建築や暮らしに関わる調査研究を土台に、新規取材分を加えた事例をとおして、川を意識した暮らしの中で生まれた住まい方について再考します。会場では、中部の木曽三川、関東の利根川や荒川、また四国の吉野川流域など、全国の主な洪水常襲地帯にみられる10種類の河川伝統技術による水防建築類を、写真家・大西成明氏による撮り下ろし写真を中心に、それぞれの河川流域や技術の特徴などの解説を添えて紹介します。また、敷地内の水屋の配置や母屋との高さの差異、そして水勢を軽減する敷地形状が把握できる模型2点を展示します。さらに昭和30年代の木曽三川流域で見られた 輪中 わじゅう (堤防に囲まれた水防共同体)内の風景を記録した河合孝氏の写真を、当時使われていた独特の農具とともにご覧いただきます。 川への意識が薄れてきている中で、水防建築は、その数を徐々に減らしながらも、水害の記憶を刻む地域のプロフィールとなって美しく印象づけています。

写真2

●主な展示

<水屋・水塚/木曽三川、庄内川、荒川、利根川>

このコーナーでは、木曽三川、庄内川、荒川、利根川の流域ごとに多様な水屋・水塚を紹介します。荒川流域の水屋は土蔵が多く、利根川流域は木曽三川と同様に冬の突風から土壁を守る板張りの蔵が多く見られる他、避難生活用の居住式や貯蔵用の倉庫式といった用途の違いや、水塚の高さや積み方にも地域差があります。また水屋を備える家では「上げ舟」という救助・避難用の小舟が軒先などに吊るされていることが多いのも特徴です。

写真3

<段蔵/淀川>

淀川は、水運などによって大都市大阪の繁栄を支えた川でしたが、昔から流域に酷い水害をもたらす川でした。この洪水常襲地帯で生み出されたのが「段蔵」という独特な建築物です。その名の通り、階段状に高くなっていく蔵が連なる水防建築です。この建築様式は、淀川流域以外ではほとんど見ることができません。

写真4

<城構えの家/吉野川>

四国山脈を横断し、徳島平野を貫く大河川、吉野川は頻繁に洪水を起こしてきました。16世紀から川の中流域で藍づくりが栄えます。洪水が沃土を運び藍に適した湿地帯を作ることができたのです。危害を及ぼす洪水と富をもらす藍作は二律背反の関係となりました。
その経済力を背景に作られたのが「城構えの家」。敷地の周りを城のような石垣で囲い、敷地全体をかさ上げして洪水から屋敷を守る水防建築です。

写真5

<木曽三川 輪中の風景 -河合孝さんの写真記録から->

岐阜県大垣市在住の写真家・河合孝さん(1931年生)が木曽三川の輪中を撮りはじめたのは昭和30年代初頭。そのころは、まだ輪中らしい光景を見ることができる時代でした。ここでは、当時の輪中の暮らしを収めた迫力あるモノクロ写真8点をご覧いただきます。水屋をはじめ、周囲の土を採って盛り土にしたことで家のまわりが沼や池になった「堀潰れ」に囲まれた農家や、「堀田」と呼ぶ土を積み上げた輪中の田んぼ風景、また洪水時、夜中じゅう堤の上で警戒していた輪中民が朝を迎えている様子など、今では窺い知れないものばかりです。写真に加え、「堀田」で農作業をするときに使用されていた道具類5点を展示し、当時の様子をさらに間近に感じていただきます。

│リリース用画像│

本リリースに掲載された画像(写真1〜5)の送付をご希望の際は、メールにて担当者までお問い合わせ下さい。
また、ウェブサイトにはその他の画像も掲載しておりますのでご確認いただき、お問い合わせ下さい。
http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003507.html

【写真キャプション・クレジット】

写真2:
旧名和邸(輪中生活館・大垣市重要有形民俗文化財)母屋の土間。天井から逆さに吊るされている「上げ舟」がみえる。洪水の危険が知らされると真っ先に下ろされ、家の前の舟繋ぎの木に縛って、最終的な避難手段を確保する
写真3:
「段蔵」松村邸(大阪府高槻市)。最も高い蔵は地面から2.5mもある。収める物の重要度、利用頻度を考えて、どの高さの蔵に何を置くかが決められていた(一番高い蔵は衣装蔵)
写真4:
「城構えの家」中野邸(徳島市北島町)。吉野川下流に位置する北島町は、旧吉野川と今切川に囲まれているため、昔からたびたび水害に見舞われた。江戸時代から地主を務めてきた中野家も、城構えの趣ある姿を維持している
写真5:
水屋をつなぐ「どんど橋」。水屋が明治29年の大洪水で一部浸水したため、左により高い石垣を組んで新しい水屋をつくらせた。石垣の高さは4〜5mにも達する。この家は酒造業を営んでいた大地主であった

写真2〜4の撮影:大西成明、写真5の撮影:河合孝

│関連企画のご案内│

〔対談〕 水屋・水塚 水防建築を歩く

日 時
2016年7月16日(土)14:00〜15:30
講 師
畔柳昭雄(日本大学理工学部教授)、渡邉裕之(ライター)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料 *要予約、定員70名
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
「水防建築」から、人々が培ってきた「水防の知恵と住まい方」を考えます。まず約15年にわたって水屋・水塚のフィールドワークを行ってきた畔柳氏より日本全国で調査された水防建築を紹介、次に「水屋・水塚」展のため、各地のレポートを行った渡邉氏にそれらの現状を語っていただきます。それぞれの内容を踏まえ、かつてあったコミュニティーもしくは個人レベルでの建築や構造物による水防対策から、これからの治水対策について語り合っていただきます。
最後に、これまで舟小屋や海の家など水辺の建築に関する本を共著されてきた両氏から、それらの魅力と可能性を語っていただく予定です。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『水屋・水塚 −水防の知恵と住まい−』

6月上旬発売予定(84ページ予定、本体価格1,800円)
構成案 撮り下ろし写真:大西成明
【図版構成】水屋・水塚、段蔵、城構えの家など水防建築類10種
  取材インタビュー…渡邉裕之(ライター)
【インタビュー・論考】
  インタビュー「輪中の暮らし(仮)」 河合孝 (写真家、大垣美術家協会理事)
  論考「水屋が語る'生きる知恵'(仮)」畔柳昭雄(日本大学理工学部教授)
  論考「治水哲学のこれから(仮)」高橋裕(東京大学名誉教授 河川工学専攻)

│巡回展のご案内│

東京会場:2016年9月8日(木)〜11月26日(土)開催予定