ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、あらかじめご了承ください。

LIXILギャラリー 【建築・美術展】のご案内
「クリエイションの未来展」 第9回
清水敏男監修
スピリチュアル・イマジネーション 神馬啓佑+宮田彩加+山上渡

2016年08月10日

「クリエイションの未来展」 第9回

清水敏男監修
スピリチュアル・イマジネーション 神馬啓佑+宮田彩加+山上渡

会期:2016年9月8日(木)〜11月22日(火)
会場:LIXILギャラリー

左上:宮田 彩加
「ジャガーの形態と対称性」
2014 約80×62cm
ミシン糸
撮影:南 竜司

右上:神馬 啓佑
「Nice to meet you」
2016 245p×168 cm
acrylic on cotton and wood
撮影:上野 則宏

左:山上 渡
「Rite of passage」
2014 162cm×97cm
acrylic on canvas

│クリエイションの未来展について│

 

LIXILギャラリーは株式会社LIXILの文化活動の一環として2014年より「クリエイションの未来展」を開催しています。日本の建築・美術界を牽引する4人のクリエイター、清水敏男氏(アートディレクター)、宮田亮平氏(金工作家)、伊東豊雄氏(建築家)、隈研吾氏(建築家)が監修者として、独自のテーマで現在進行形の考えを具現化します。

│展覧会の見どころ│スピリチュアル・イマジネーション 想像力のリアル

 

「クリエイションの未来展」第9回目となる今回は、美術評論家の清水敏男氏監修のもと、「スピリチュアル・イマジネーション」を開催します。
不穏で不透明な現代社会において、生きるために人々はあらゆる可能性について想像力を巡らせています。また、ものづくりにおいても想像力や閃きはその源となります。本展では想像力と霊性(スピリチュアル・イマジネーション)をテーマに制作をする同時代の若手作家3名の作品を展示します。
神馬啓佑氏は、2つの物事や概念の間に成立するものをテーマに、指で絵の具を使って描く指頭画やインスタレーション、ペインティングを制作します。
宮田彩加氏は、コンピュータミシンのプログラムにノイズを入れて生物の形態や物事の発生、進化の在り方を刺繍で表現します。
山上渡氏は、増殖と変容や結びつきをテーマに、粘菌や原始宗教、森羅万象など独自の神秘的な世界観を絵画や立体に表します。
そこには共通して、肌触りや触覚的など感覚的であること、生命や宇宙など大いなるものへの畏怖と敬仰の霊性があります。

│「クリエイションの未来展」第9回の監修者 清水敏男氏について│

撮影:
Herbie Yamaguchi

清水敏男 Toshio SHIMIZU 

TOSHIO SHIMIZU ART OFFICE代表取締役、学習院女子大学・大学院教授、キュレーター、美術評論家。
1953年東京生まれ。ルーヴル美術館大学修士課程修了。東京都庭園美術館、水戸芸術館現代美術センター芸術監督を経て、現在は展覧会やアートイベントの開催、パブリックアートのプロデュースを中心に活動している。主な活動に、「上海万国博覧会日本産業館トステムブース・アートディレクション」、「東京ミッドタウン・アートワーク」、「豊洲フロント・アートワーク」、「名古屋ルーセントタワー・アートワーク」、「いわて県民情報交流センター・アートワーク」、「ミューザ川崎・アートワーク」、「オノ・ヨーコ BELL OF PEACE 平和の鐘(学習院女子大学)」、「THE MIRROR」、「大手町フィナンシャルシティ」がある。

│監修者からのコメント│「スピリチュアル・イマジネーション 想像力の霊性」

神馬 啓佑 「& Belt」
2016 245 x 168cm
acrylic on cotton and wood
撮影:上野則宏 

宮田 彩加
「WARP×Knots
−エルンスト・ヘッケル
  へのオマージュ−」
2013 可変
ミシン糸・綿布・木製パネル 撮影:矢野 誠

山上渡
「Tokyo Atlas」
2013
320 x 400 x 5cm
Mixed media on wood panel

芸術の本質は霊性にある。霊性とは限りある時空を生きる人間が憧れる非物質的で普遍的な領域にかかわることである。

非物質的で普遍的な領域の存在についての思いは、おそらく人類が記憶を書き記すことを始める以前からあった。先史時代の土偶、洞窟壁画など多くの遺品は人類がそうした領域の存在を想定していたことを語っている。やがて人類は複雑な文明を築いていくのだが、たとえばエジプトに現れた文明が残した膨大な建築、絵画、彫刻類はそうした領域の存在にかかわるものだ。日本の縄文以来の土器類、埴輪もそうした領域の存在を想定している。

プラトンは「感覚される領域と思考(あるいは直知)される領域を区別して、後者を前者よりも実在性の高いものとみなした。例えば目に見える美しい色や形は感覚領域にあるが、美しさそのもの(美のイデア)は思考領域にある」(水地宗明『新プラトン主義を学ぶ人のために』)と考えた。この考え方はプロティノスの新プラトン主義を生み西欧の思考に多大な影響を与え続けたが、20世紀の西田哲学(『善の研究』)に連なると同時に西田ではアジアで生まれた思考も大きな影響を与えている。西田はそれを「無」と考えた。

人類誕生の初期からそして地球上のさまざまな場所で、非物質的で普遍的な領域の存在を想定することは人類の主要かつ重要な思考となってきた。そうしたことが世界各地で行われ、それが現在まで続いていることは1989年の展覧会『大地の魔術師たち』(ジャン=ユベール・マルタン、ポンピドゥーセンター)が明らかにした。

芸術は物質によって成り立っている。我々はその物質性を楽しんでいる。美しい線、巧みに選ばれた色彩、その塗り方の絶妙さを愛でないものはいないだろう。磁器の名品に溢れる品性、なめらかな表面の輝き、もしくは艶消しの陰影を眺めてしばし時を忘れる。しかしそうした物質への賛美はそこで止まるものではない、と考えることは自然なことだろう。現象の背後には何か時空を超えたものがある。それは人類が長きにわたって考えてきたことなのだから。

ところでその背後にある何か共通した価値を探ることは実は美術界では今重要な課題であると思う。それはまず、マルセル・デュシャンが感覚的な手仕事と思考領域(コンセプト)を明確に分けたことに端を発する問題、『大地の魔術師たち』が提議した問題などに加え、この日本において「美術」ということばの定義が、日本が過去数百年発展させてきた「美術」の概念と齟齬をきたしていること、20世紀後半に日本では「美術」が「アート」ということばに置き換わった問題、「アート」がエンターテインメントと区別がつかなくなっている問題など未解決案件が山のようにあるのだ。

最近、非西欧の「アート」を対象としたフランス国立ケ・ブランリ美術館元館長ジェルマン・ヴィアットとこの問題について話しあう機会があった。ヴィアット元館長は同館での民藝の展示を通じて深く思考する機会を得たという。非西欧文化圏にある日本の民藝の概念と西欧の「美術」の概念をどのように接続することが可能か、もしくは人類の創造を包括できるより大きな概念は可能か、という問題である。

私はそこに非物質の霊性(スピリチュアル)に関する想像力について想起せざるをえない。人類はもともと霊性を求めることを連綿と行ってきたのだから。

本展覧会では3人の作家、神馬啓佑、宮田彩加、山上渡が霊性と想像力について考え、作品を制作し、キュレーターとともに展示を通じて表現することを目指している。

この3人はもともと触覚的かつ視覚的な作品を制作している。プラトンのいう感覚領域である。神馬は指頭画(指で絵の具を使って描く)を制作してきた。触覚から生まれる絵画は、粘土を捏ねるまたは海水を攪拌して世界を作った創造神話とつながっている。

宮田は刺繍という物質感、肌触りを重要な要素とする作品を制作している。山上は粘菌に多大な関心を抱いている。粘菌は動物と植物の両方の性格を合わせもった生命で、南方熊楠をとりこにした。きわめて触覚的である。こうして彼らはともに複合的な感覚領域に深く関わっている。

しかし例えば神馬は制作において「神」が降りてくることを待つという。それは感覚領域以前に、スピリチュアルな何ものかと想像力の触手を伸ばしてつながることではじめて感覚が目覚め物質化するということではないだろうか。

西欧近代文化は視覚に偏執的こだわってきた。それは17世紀のガリレオ・ガリレイやデカルト以来、理性へ過剰によりかかってきたことが原因だ。しかし三名の作家はそうした状況に対してごく自然の成り行きでそれとは異なった思考を示している。霊性という非物質領域との関わりが芸術の本質であり、世界の「アート」を包括的に定義してくれる概念ではないかと予感している。本展覧会はその一歩である。

清水敏男

│作家略歴│

神馬啓佑 Keisuke JINBA

1985年愛知県生まれ。2011年 京都造形芸術大学大学院芸術研究科表現専攻修了。
「感触」、「物質と記憶」という主題のもと作品を制作し、身体的動作や実際にあった体験への感受性を感触として掴み取れる形で見いだす。その行為の中で発生するドローイング、ペインティングなどの表現方法で制作している。

【最近の展覧会】

2016年
「VOCA展 現代美術の展望 ‐新しい平面の作家たち‐」(上野の森美術館、東京)
「架設」(京都精華大学 対峰館、京都)
2015年
「塑性について」(Division、京都) 、(N-mark、愛知)
「まぼろしとのつきあい方」(Galerie Aube、京都)
「眼球に近い面」(東山 アーティストプレイス、京都)
2014年
「THE MIRROR」(名古屋商工会館、東京)

 

撮影:南 竜司

宮田彩加 Sayaka MIYATA

1985年京都生まれ。2012年京都造形芸術大学大学院芸術表現専攻修了。大学で染織を専攻したことがきっかけで、染めた布に奥行きやボリュームを出すために手刺繍・ミシン刺繍によるオリジナルテクニックを使った制作を始める。ミシンという世の中に溢れた媒体に意図的にバグを起こすことで現れる糸の層「WARP」シリーズや、支持体の布を無くし、糸だけで構築させていく「Knots」シリーズなど、「エラー:失敗の行為によって新たな価値観が生まれる」を根本にしたテクニックと、生物の形態や、物事の発生や進化の在り方を呼応させた作品作りをしている。

【近年の受賞・展覧会歴】

2016年
「琳派400年記念新鋭選抜展 ‐琳派FOREVER‐」日本経済新聞社京都支社賞
(京都文化博物館、京都)
2015年
「花を形成するプロット」
(H.P.FRANCE WINDOW GALLERY MARUNOUCHI、東京)
2014年
「京展」京展賞(京都市美術館、京都)
「KUAD Graduates Under 30 Selected」KUADオーディエンス賞
(Galerie Aube、京都)
「THE MIRROR」(名古屋商工会館、東京)など。

 

山上渡 Wataru YAMAKAMI

1981年高知県生まれ。長野県在住。絵画、立体、インスタレーションを用い「増殖と変容」そこから生まれる結びつきをテーマとしている。マクロやミクロといった可視化できない領域に私たちの日常とを連関させることで、新たな現実 (創造)世界の在り方を描きたいと試みている。

【近年の受賞・展覧会歴】

2014年
「THE MIRROR」(名古屋商工会館、東京)
「六本木アートナイト 2014」(東京ミッドタウン他、東京)
「ミッドタウンストリートミュージアム」(東京ミッドタウン、東京)
2013年
「Tokyo Midtown Award 2013」準グランプリ、オーディエンス賞受賞
(東京ミッドタウン、東京)
2009年
岡本太郎現代芸術賞 特別賞受賞

│概要│

清水敏男監修 スピリチュアル・イマジネーション
神馬啓佑+宮田彩加+山上渡

会 期
2016年9月8日(木)〜11月22日(火)
休館日
水曜日
開館時間
10:00〜18:00
企 画
株式会社LIXIL
会 場
LIXILギャラリー
東京都中央区京橋3-6-18 東京建物京橋ビルLIXIL:GINZA 2F
入場料
無料
会場写真
http://www1.lixil.co.jp/gallery/
会期開始5日目から会場写真をご覧頂けます。
制 作
株式会社LIXIL
協 力

│関連企画│ 

トークイベント
清水敏男×神馬啓佑×宮田彩加×山上渡

開 催 日
2016年10月3日(月)18:30〜20:00
定 員
50名(定員になり次第〆切)
会 場
LIXIL:GINZA 1F
参加無料、要申込(お電話もしくはホームページから)