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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2017年02月17日

武田五一の建築標本
−近代を語る材料とデザイン−

Goichi Takeda's Architectural Specimens
          -Materials for Building and Designing the Modern Age

会期:2017年3月10日(金)〜5月23日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1:金具見本 (湯浅伸銅株式会社) 所蔵:京都大学建築学専攻 撮影:佐治康生

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2017年3月10日(金)〜5月23日(火)の期間、「武田五一の建築標本 −近代を語る材料とデザイン−」を開催します。

近代を牽引した建築家の一人・武田五一(1872−1938)は、無数の材料とデザインの集積である建築を個々の標本として収集した人でもありました。

本展では、分野を横断して多様に集められた「建築標本」約100点を紹介しながら、五一の建築や意匠をとらえる独特な視点とその時代性を浮彫りにします。

│開催概要│

「武田五一の建築標本―近代を語る材料とデザイン」
Goichi Takeda's Architectural Specimens-
Materials for Building and Designing the Modern Age

会 期
2017年3月10日(金)〜5月23日(火)
開館時間
10:00〜17:00
休館日
水曜日(祝日は開館)
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
京都工芸繊維大学美術工芸資料館、京都大学建築学専攻

http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003680.html

│展覧会の見どころ│

国会議事堂の設計にも関わった武田五一は、公共建築から個人邸、社寺仏閣、墓碑、橋、公園に至るまで生涯に多彩な建築作品を残した建築家であると同時に、教育と後人の育成にも力を注ぎました。創設に携わった京都大学工学部建築学科やデザインを教えた京都工芸繊維大学には、五一が中心となって収集した多岐にわたる建築素材や金物サンプル類などが残されています。教育資料である一方で、好奇心旺盛な五一の分類学的思考によって採集されたそれらはまさに「建築標本」と呼ぶにふさわしく、彼がコレクターとしての側面も強く持ち合わせていたことを物語ります。

本展では、五一が教育界に携わった大正から昭和初期に収集された「建築標本」約100点を「新たなる材料」「時代の流行」「近代的生活」「古典再考」「20世紀初頭のデザイン表現」「講義の足跡」のカテゴリーに分けて紹介します。また、五一が収集に関与した記録として京都大学に保管されている貴重な「備品監守簿」も展示します。当時を牽引する建築家による業種を超えた建築デザインの標本群をご覧ください。

本展をとおして、明治の幕開けとともに近代化が始まった日本の建築意匠を象徴する多彩な材料や技術を一望しながら、あらゆるものを貪欲に吸収していた五一の世界観を披露します。

写真2

写真3

写真4

写真5

写真6

写真7

●展示構成

<新たなる材料>

五一は早くから鉄筋コンクリートの有用性に着目し、取り組んだ建築家として知られる他、ドイツ視察で人造石を発見し、日本のメーカーに製品開発を促しました。さらに世界で板ガラスが大量生産されるようになると同じく、装飾ガラスや色ガラス、プリズムガラスなど様々なガラスまでも収集しました。当時の新技術に敏感だった五一の好奇心で集められた新素材を披露します。

<時代の流行>

京大には、建築の化粧材としてのタイルやテラコッタが豊富に残されています。自身の建築にも多用した五一は「タイル使用の先駆者であり、テラコッタ導入の提唱者」とも言われています。当時の流行でもあったスクラッチタイルや布目タイル、テラコッタなど表情豊かなマテリアルを紹介します。

<近代的生活>

市民を前にした講演で五一は「住宅は休息の場である」と定義し、そのためには暖房、換気、採光などと合わせて衛生面での近代化が急務であると語っています。さらに住宅の保安には施錠を基本として泥棒対策をするように促しています。水栓金具や錠前など快適で安心できる住まいのための標本類をご覧ください。

<古典再考>

京大では建築学部創設当初より過去の建築様式を正しく理解するために歴史教育も重視していました。それを裏付けるように、当時の学生達のノートには日本の美術工芸や建築様式について様々なスケッチが残されています。古建築模型や石膏模型、古瓦、建具雛形など国内外の建築史にまつわる資料を紹介します。

<20世紀初頭のデザイン表現>

五一は京大の教授になる前フランスに留学し、アールヌーボーやウィーン分離派と出会います。留学後は京都高等工芸学校(現京都工芸繊維大学)図案科の教授となり、そこでの講義に用いるため、装飾金具などをヨーロッパより取り寄せました。世紀末から新世紀の幕開けを欧州で体感した五一により調達された当時の最先端の工芸意匠をご覧ください。

<講義の足跡>

京都高等工芸学校の図案科では、蝶の標本を模写させ、翅の模様までも図化させるなど、五一は図案における色彩を特に重要視していました。学生による色彩構成の作品や、生活空間の間取りや什器をスケッチした京大生の受講ノート、さらには五一直筆の講義ノートも披露します。

【写真キャプション・クレジット】

写真2:
板ガラス見本。厚さや加工が多様な板ガラスの見本は木箱に収め、持ち運べるようになっている。取り出しやすさも考慮してあり、ガラスの厚みも一目で分かる。
写真3:
テラコッタ釉薬見本(伊奈製陶製)
伊奈製陶は光沢のないマット釉を主軸に、石面のような多色混交仕上げとクラックの出ない施釉技術を追求した。
写真4:
須賀商会のレバーハンドル式堅型湯水混合栓。明治期、須賀商会は来日した技術者と共にジョサイア・コンドル指導のもとで外国人居留地の水道工事を担い、水洗金具を日本で普及させた実績を持つ。
写真5:
建築装飾繰形及柱頭。列柱の柱頭で、左はローマ時代のコンポジット式、右はギリシャ時代のイオニア式。いずれも大正12年(1932)8月、武田五一が京都大学に寄贈したもの。
写真6:
京都高等工芸学校の図案標本。引手金具フックの見本。明治42年(1909)に高田商会大阪支店より購入。
写真7:
色彩構成の作品。 作者不詳。

写真2〜5:所蔵/京都大学建築学専攻、写真6〜7:所蔵/京都工芸繊維大学美術工芸資料館、撮影すべて:佐治康生

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 武田五一から学ぼう、近代建築の技術と意匠

日 時
2017年4月29日(土・祝)14:00〜15:30
講 師
石田潤一郎(京都工芸繊維大学教授)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料(※要予約、定員70名)
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
武田五一は一体どのような建築家だったのか?石田氏は長年にわたり日本近代建築史を研究され、五一についても多くの文章を執筆してこられました。彼の作品には様々な技術や意匠が用いられ、多面的で独特な表現思考は残された標本からも感じるとることができます。五一の講義を受けた人々の手記や記録から人物像や教育者としての功績なども紐解いていただきます。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『武田五一の建築標本−近代を語る材料とデザイン』

3月中旬発売予定(74ページ予定、本体価格1,800円)

│巡回展のご案内│

東京会場:2017年6月8日(木)〜8月26日(土)開催予定