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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2017年08月17日

織物以前 タパとフェルト

EARLY CLOTH TAPA and FELT

会期:2017年9月8日(金)〜11月21日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1:墓地に広げられたタパ(フィジー)                                              写真:©飯田裕子

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2017年9月8日(金)〜11月21日(火)の期間、「織物以前 タパとフェルト」を開催します。
タパとフェルトは、身近にある植物や羊毛を使い人々の手を介して生み出されてきた原初の布です。それらは織物へと技術が進化する以前から伝わると考えられています。本展では、南太平洋の島々や、東西アジア地域で古くから暮らしの中に使われてきたタパとフェルトに焦点を当て、周辺の実資料を合わせた約60点から、素朴で力強い不織布の魅力を紹介します。

│開催概要│

「織物以前 タパとフェルト」
EARLY CLOTH TAPA and FELT

会 期
2017年9月8日(金)〜11月21日(火)
開館時間
10:00〜17:00
休館日
水曜日
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
福本繁樹、長野五郎

http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003846.html

│展覧会の見どころ│

南太平洋の島々では、成長の早いクワ科の樹皮を打ち延ばして作る樹皮布=タパが作られてきました。ここは海洋の孤立した地域であることから機織りの伝播がごく一部に限られたため、独自の布文化が現存したと考えられています。一方、ユーラシアでは身近な羊の毛を 縮絨 ( しゅくじゅう ) させシート状にする圧縮フェルト作りが続けられています。時に過酷な環境に身を置く遊牧民を寒さや乾燥から守る役割を担ってきました。タパやフェルトは衣服だけでなく儀式や結界、住居の装飾等の用途で暮らしと密接にかかわり長く利用されています。民族の文化を象徴するほどに、どちらも大胆さと繊細さが絡み合う意匠や風合いと原初の布ならではの力強さがあります。
本展では、南太平洋の島々に三十数年来通いタパ研究を続ける福本繁樹氏と、主に1990年代に東西アジアで圧縮フェルトの技術調査を行った長野五郎氏らによって収集された貴重な資料約60点をとおして、織物以前から伝わる不織布の世界を紹介します。パプアニューギニア、フィジー、トンガなど地域ごとに展示するタパのコーナーでは、個々に異なる文様や色合いなどをじっくりとご覧いただきます。フェルトのコーナーでは伝統的な技法による敷物から希少な遊牧民のマントなどを展示します。これらの他、制作に使われる材料や道具類、また、制作工程を追ったスライドショーなども披露します。民族の伝統と技術の継承が、これら原初の布には込められています。本展が、布をめぐる人間の営みや染織文化の原点に触れる機会となれば幸いです。

写真2

写真3

写真4

写真5

写真6

●展示構成

<南太平洋のタパ>

主にパプアニューギニア、フィジー、トンガの3地域のタパをご覧いただきます。
パプアニューギニアは、豊かな原生林の恵みを材料に部族に伝わるタパが伝統的に作られてきた地域です。染料は黒と赤褐色の2種で、文様は家系で定められたものや女系に代々伝えられるものなど数多くあります。またそれらは氏族内に語り継がれてきた伝説や神話由来のものも多く、外部へは他言しない掟があります。大樹の文様が施された腰巻(写真2)はノーザン州マイシン族のもので、大胆な文様からは豊かな表現力を感じることができます。
一方、フィジーはタパの製法が最も発達した地域と言われています。薄く滑らかなものや継ぎ合わせて巨大なタパも作られます。和紙のような風合いを持つラウ群島モゼ島の肩掛け(写真3)や、1枚の布を作るのに数十工程もかけ誕生するタベウニ島の美しいタパ「花嫁のれん」もご覧いただきます。
現代で最もタパが盛んに作られているのがトンガです。巨大なタパ作りは作業小屋に集まった女性たちの共同作業で仕上げられていきます。型板等を用いて文様を摺りだすのが特長です。

<タパ作りの道具と原料>

タパの原料となるカジの木の外皮を剥がす貝や靭皮繊維を叩いて伸ばす道具の他、顔料類、色見本、フィジーで用いられる型紙、またトンガで使用されている施文用筆や型板とコカの染料で彩色された摺り見本など各地域独特の布作りにまつわる道具類をご覧いただきます。

<東西アジアのフェルト>

新疆ウイグル自治区カシュガルとトルコのコンヤで制作された圧縮フェルトを紹介します。フェルトは、羊毛を層に重ね、水分、熱、振動、圧を加え、さらに石鹸などのアルカリ性物質を加えてシート状にして完成します。
カシュガルからは、羊の白と黒の原毛を使って伝統的な模様が描かれた、重厚で素朴な味わいのある敷物を展示します。コンヤからは、世界のフェルト作家が伝統技法を学びにくるという職人の元で制作された美しい敷物を披露します(写真5)。知識に裏打ちされた精緻な技と植物染料を使った優しい風合いには独特の趣があります。併せて今では珍しい遊牧民のマントなどもご覧いただきます(写真6)。

<フェルト作りの道具>

ここでは、フェルト作りに欠かせない綿打ち弓「ヤイ」を紹介します。木枠に張った羊腸の弦「ケリシ」を木槌「トクマック」で弾きながら、その振動で絡んだ羊毛を細かくほぐす伝統的な道具です。頑丈で持ち運ぶこともできるため、ユーラシア大陸で広く使われてきました。かつて日本でも開綿作業の際に同じ道具を使っていた歴史があります。

【写真キャプション・クレジット】

写真2:
パプアニューギニア ノーザン州マイシン族のある家系に伝えられた儀礼用タパ。腰巻として用いられ大樹の文様が施されている。
所蔵:福本繁樹 撮影:益永研司
写真3:
フィジー ラウ群島モゼ島の肩掛け。紙のように薄く軽やかな仕上がり。
所蔵:福本繁樹 撮影:益永研司
写真4:
トンガでのタパづくりの様子。樹皮をハンマーで打って伸ばし、白生地を作る。
写真撮影・提供:福本繁樹
写真5:
コンヤのフェルト職人、メハメット・ギレギチェさんの工房のようす(1997年)。縮絨が終わり、敷物の表面に剃刀を当てて白い毛をカットし色を鮮やかに浮かび上がらせて仕上げる。
写真撮影・提供:長野五郎
写真6:
遊牧民が羊飼い用に用いるマントで、現地ではケペネックと呼ぶ。同じくコンヤのフェルト職人、メハメット・ギレギチェさんが制作した。
写真撮影・提供:長野五郎

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 織物以前のはなし 南太平洋から

日 時
2017年10月21日(土)14:00〜15:30
講 師
福本繁樹(染色家、民族藝術学会理事)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料(※要予約、定員70名)
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
南太平洋独自の織物文化とは?福本氏は大学時代に探検部に所属していた1969年から延べ16回にわたり南太平洋の島々に通い、民族の装いや文化を記録に留めてきました。われわれの常識をくつがえすユニークな発展を遂げたオセアニアの染織文化に魅了されたといいます。
講演では、調査記録を交えながら各地のタパの特性を語っていただくとともに、タパから編み、原初の織りが生まれるまでの「織物以前のはなし」をひも解いていただきます。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『織物以前 タパとフェルト』

9月中旬発売予定(76ページ予定、本体価格1,800円)

│巡回展のご案内│

東京会場:2017年12月7日(木)〜2018年2月24日(土)開催予定