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巡回企画展のご案内|大阪会場|

2017年11月07日

ニッポン貝人列伝
−時代をつくった貝コレクション−

Kaijin - Shell Men : Japanese Conchologists whose Shell Collections Launched an Epoch

会期:2017年12月8日(金)〜2018年2月20日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

写真1:キセルガイ科の標本 (黒田コレクションより) 所蔵:西宮市貝類館、撮影:佐治康生

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2017年12月8日(金)〜2018年2月20日(火)の期間、「ニッポン貝人列伝 −時代をつくった貝コレクション−」を開催します。

南からの黒潮と北からの親潮によって世界的にも豊かな貝分布がみられる日本。本展は、この貝大国で近代貝類学の黎明期を築いた伝説の貝人たちの列伝とともに、彼らの熱意と情熱の結晶である貝コレクションおよび周辺資料の約240点から、新たな貝の世界の魅力に迫ります。

│開催概要│

「ニッポン貝人列伝 −時代をつくった貝コレクション−」
Kaijin -Shell Men: Japanese Conchologists whose Shell Collections Launched an Epoch

会 期
2017年12月8日(金)〜2018年2月20日(火)
開館時間
10:00〜17:00 
休館日
水曜日、12/30-1/4
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
監 修
奥谷喬司(日本貝類学会名誉教授)
協 力
大阪市立自然史博物館、国立科学博物館、西宮市貝類館、陸前高田市立博物館
展示デザイン
ジョイントセンター株式会社

http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003923.html

│展覧会の見どころ│

古くから貝に魅了され、貝を食べ、暮らしに利用してきた日本人。江戸期には好奇心あふれる博物学者らによって貝は収集され、精緻で美しい図譜が編まれました。貝類が科学的に研究されるようになったのは明治になってからのこと。日本で近代貝類学の幕が開けます。その端緒を開いた一人が実業家の平瀬與一郎です。平瀬は、日本を中心に採集した貝標本を海外に販売する傍ら、知識を高め、私設の貝類博物館まで開設します。またその弟子の黒田徳米は日本における第一級の貝類学者となりました。以後、日本の貝人たちは数を増やしながら、コレクターと研究者が車の両輪となって貝類学を発展させていきます。
本展では、日本近代貝類学の黎明期を築いた貝人10人の列伝と厳選された彼らの貝コレクションを周辺の実資料とあわせて紹介します。貝に捧げた一心不乱な人生が綴られる貝人列伝。それをとおしてみる貝標本からは、造形以上の面白さや魅力が生まれてきます。マニアックな陸貝(かたつむりなど)の世界を探求する研究者、一方国内外、美麗から微小まで追い求めるコレクター。一時代をつくった貝人たちのコレクションが一堂に揃う初の機会、そして、今までにない魅力的な貝の世界に触れることのできる展覧会です。ご期待ください。

写真2

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●主な展示 <10人の貝人列伝とコレクション>

私財を投じて尽力した、日本貝類学の先駆者
平瀬與一郎(1859-1925) ・・・写真2

日本各地や中国、台湾から集めた貝で標本を作り、海外の研究者に納品した。標本コレクションは8000種類以上。私財を投じて、「平瀬貝類博物館」を開館、また、貝研究の巨人、黒田徳米を育てたことも大きな功績である。美術にも造詣が深く、出版した『貝千種』は海外からも高い評価を受けた。

100歳まで研究を続け、日本の貝類学を開花させたレジェンド
黒田徳米 (1886-1987) ・・・写真1

10代のころから平瀬の元で働き、京大で博士号を取得。生涯で650種の新種を記載した。強靭な精神力と博覧強記、研究に対する謹厳実直な態度は、伝説的に語り継がれている。1971年、昭和天皇の貝類コレクションを『相模湾産貝類』として編纂した。

今、再び脚光を浴びる、岩手博物界の太陽
鳥羽源藏(1872-1946) ・・・写真3

戦前、「西の熊楠、東の源藏」とも評され、岩手を拠点に昆虫学、植物学、動物学、貝類学、地質学、考古学など、幅広い分野で功績を残した。鳥羽の貝コレクションは東北の陸産海産の貝、南方の貝が多い。それらは東日本大震災の大津波で被災、水没したが、標本レスキューによって今また蘇る。

貝類愛好家の裾野を広げた、偉大なるアマチュア
吉良哲明 (1888-1965) ・・・写真4

小学校教員にして住職という、変わった経歴の持ち主。吉良が収集した1200種の貝で発刊した『原色日本貝類図鑑』(保育社)は貝愛好家のバイブルとなった。またガリ版刷りの貝類研究誌『夢蛤』を100号まで一人で刊行し続けた。

日本の貝類学を世界水準に押し上げた第一人者
波部忠重 (1916-2001) ・・・写真5

日本産貝類約6500種のうち、5分の1近くを波部が記載する。京大で黒田に学び、『相模湾産貝類』も編纂者として名を連ねた。研究者らしく彼のコレクションには壊れた貝や死殻も含まれる。フィールドにおける行動と熱意の人であった。

美麗貝から微小貝まで、ダンディズム溢れるコレクション
河村良介(1898-1993) ・・・写真6

元銀行員で実業家。コレクターの中でも屈指の存在。半世紀をかけて1万種、10万点以上の貝を収集し、世界の主要な貝類をほとんど網羅する日本一のコレクションを築く。

その他の貝人列伝:

<平瀬信太郎 (1884-1939)>父・平瀬與一郎の遺志を継ぎ、日本初の貝類図鑑を刊行。

<菊池典男 (1915-2013)>兄弟で紡いだ貝への夢、菊池貝類館と阪神貝類談話会。

<山村八重子 (1899-1996)>南洋の稀少貝を蒐集した、日本初の女性コレクター。

<櫻井欽一(1912-1993)>老舗の鳥すき屋の主にして、鉱物学博士で貝類コレクター。

【写真キャプション・クレジット】

写真2:
『貝千種(かいちぐさ)』(1914-5、1922)全4巻。美術に造詣の深かった平瀬與一郎による貝類図鑑。日本の版画技術の粋を尽くした多色刷木版画。出版は木版画、美術出版で知られる京都の「芸艸堂(うんそうどう)」。
所蔵:大阪市立自然史博物館(鳥羽水族館寄託)
写真3:
「ナンブヒダリマキマイマイ」(鳥羽コレクション)この貝標本には「日出島 1934」という鳥羽源藏の字が記された封筒が残されている。1936年に黒田徳米とともに新種発表した貝がこれに当たるかと推測されるもの。
所蔵:陸前高田市立博物館
写真4:
「クロミナシ」(吉良コレクション)沖縄以南に分布。吉良哲明による『原色日本貝類図鑑』(保育社)の図版プレートNo.36(いもがい科)で紹介された貝の一つ。所蔵:大阪市立自然史博物館
写真5:
「ムラヤママイマイ」採集地は明星山(新潟)。波部忠重が新種として記載した貝。
所蔵:国立科学博物館
写真6:
「オオシマヒオウギ」(河村コレクション)。採集地は奄美大島。河村はお気に入りの貝の標本を、紫色に染めた真綿入りケースに保存していた。これはその一つ。所蔵:国立科学博物館

撮影すべて:佐治康生

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 伝説の貝標本 貝が伝えるメッセージ

日 時
2018年1月20日(土)14:00〜15:30
講 師
石田 惣(大阪市立自然史博物館 学芸員)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料(※要予約、定員70名)
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
博物館の収蔵庫には、先人の集めた貝の標本が静かに眠っています。これらの標本は、採集された当時の自然環境を物語る貴重な歴史資料でもあります。今回は貝類研究を専門とされる大阪市立自然史博物館学芸員の石田惣氏とともに、本展で登場する平瀬與一郎、吉良哲明、鳥羽源藏をはじめとする貝人のコレクションから、日本の渚の原風景を探ります。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『ニッポン貝人列伝 −時代をつくった貝コレクション−』

12月15日発売予定(88ページ予定、本体価格1,800円)

│巡回展のご案内│

東京会場:2018年3月8日(木)〜5月26日(土)開催予定