2018年02月16日
ふるさとの駄菓子
―石橋幸作が愛した味とかたちー
Dagashi - Kosaku Ishibashi's Love Affair with Traditional Hometown Sweets-
会期:2018年3月9日(金)〜5月22日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)
写真1:石橋幸作自筆画 駄菓子風俗図絵「駄菓子さまざま」
所蔵:博物館 明治村 撮影:佐治康生
「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2018年3月9日(金)〜5月22日(火)の期間、「ふるさとの駄菓子−石橋幸作が愛した味とかたち−」を開催します。
吹き飴、かりんとう、ねじりおこし、かるめら焼…江戸時代より日本各地で庶民に愛されてきた郷土駄菓子の数々。戦後、徐々に数が減少する中で、その姿を後世に残すべく全国行脚した人がいました。
本展では、約半世紀にわたって諸国の駄菓子を調査研究した石橋幸作さん(1900−1976)による実資料約200点から素朴で暖かいふるさとの食文化の一端を紹介し、地域に根ざしたものづくりの伝統と駄菓子をめぐるデザインの魅力に迫ります。
│開催概要│
「ふるさとの駄菓子−石橋幸作が愛した味とかたち−」
Dagashi - Kosaku Ishibashi's Love Affair with Traditional Hometown Sweets-
http://www1.lixil.co.jp/gallery/exhibition/detail/d_003978.html
│展覧会の見どころ│
昭和30年代頃までは、穀物に単純な加工を施した菓子が地域ごとに形や味を変えて数多く分布していました。それらは白砂糖を使う上菓子に対して駄菓子と呼ばれ、日本の風土や歴史、季節などを反映した「ふるさとの味」として食されてきました。
石橋幸作さん(1900−1976)は、仙台で創業明治18年から続く「石橋屋」の二代目として生まれ、自身も菓子職人として伝統の郷土菓子を作りながら約半世紀にわたって諸国の駄菓子を調べ、その記録を絵と文字で残したばかりか、紙粘土を使って意匠を立体的に再現しました。その数は優に1000点以上にもなります。それらの記録は、すでに失われた風俗や駄菓子も多く含まれるため、庶民の暮らしや菓子文化を考察する上でも貴重な資料です。
本展では、全国で採集した駄菓子をスケッチと文字で記録した冊子類や、信仰、薬、道中、食玩、お茶請けの5つのグループに分けて展示する紙粘土による駄菓子の再現模型など約200点を通して、ふるさとの駄菓子の魅力や多彩さを紹介します。民俗学的分類で記録保存を試みた幸作さんの研究者としての側面をうかがいながら、細かく作りこまれた原寸大の細工模型の形や色彩の豊かさもお楽しみいただけます。これらの他、駄菓子売りの風俗人形や自筆の図絵なども披露します。幸作さんの駄菓子愛で埋め尽くされた会場をご堪能ください。
本展を通じて、全国の多様な郷土駄菓子にまつわる原風景を伝える機会となれば幸いです。
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●主な展示
<駄菓子行脚の記録>
石橋幸作さんは全国行脚して採集した駄菓子のスケッチと、名前や製法までも聞き書きした記録を自ら製本した冊子にまとめました。今展ではその中から7冊を紹介します。主な採集地は東北地方ですが、西日本、四国、九州にまでわたり、遠方まで足を運んだ足跡を伺い知ることができます。夫人を同伴し、手弁当で絵筆を片手に目指す町に着くと夫婦が道の両側に分かれて駄菓子屋をくまなく探し歩いたといいます。
苦労しながら思いがけず出合えた喜びや、想像とは違う落胆の様子まで記され、駄菓子をめぐる悲喜こもごもが伝わります。ここでは、旅の記録帳(写真2)の他、明治期の駄菓子の商標ラベルや栞、引き札(広告)を集めたスクラップブック(写真3)や、道中の風物詩や訪ねた菓子研究者なども記録した絵日記、街道や駄菓子屋の店先を撮りためた写真アルバムなども展示します。幸作さんの人となりまでも伝わるような、生き生きとした絵と手記をご覧ください。
<紙粘土による駄菓子模型の数々>
幸作さんは、全国行脚し収集した駄菓子を、パルプにニカワを混ぜた紙粘土を用いて立体的にも再現しました。消えて無くなるものだけに、駄菓子特有の色とかたちを後世に残す手段として、培った飴細工の技量を活かして考案した方法です。また、再現だけでなく、調査研究する中で、その用途や目的によって駄菓子を5つに分類し民俗学的観点で捉え直したことも幸作さんの功績の一つです。それに従い、会場では、門前で売られる縁起菓子や宮中行事に由来する節句菓子、婚礼や法事といった個人の慶事における引菓子などの「信仰駄菓子」(写真4)、病人や産婦の栄養補給や薬効をうたった「薬駄菓子」(写真5)、道中の食糧やお土産にされた「道中駄菓子」、子供用に味や色かたちが工夫された「食玩駄菓子」、お茶と一緒に食べられる「お茶請け駄菓子」に分けて展示します。その他、吹き飴細工の模型には、狐の踊りや狸の腹たいこなどがあり、仕草も表情も豊かで見ているだけで楽しくなります。これらの模型類は考証再現されているだけに細かく作り込まれ、一見すると本物と見紛うほどの出来栄えです。
<駄菓子商売風俗人形>
江戸時代から戦前まではまだ見られた行商人の記録として、幸作さんは、飴売りを中心に駄菓子商売風俗姿も紙粘土細工で残しました。(写真6)は「吹き飴の曲吹き」で、代表的な「千成瓢箪」を作る姿です。葭(よし)の棒の先から瓢箪を膨らます妙技は独特で、手振り身振りで面白く演じてみせる飴細工師の風俗を見事にとらえています。その他、しんこ細工師、団子売り、せんべい屋など計9体を通して、駄菓子がかつてどのように売られていたかを紹介します。様々な口上までも聞こえてきそうな表情や細かな所作に注目してご覧ください。
【写真キャプション・クレジット】
写真3〜6 所蔵すべて:博物館 明治村 撮影すべて:佐治康生
│関連企画のご案内│
〔講演会〕 ふるさとの食文化 仙台駄菓子から見えるもの
│新刊 LIXILブックレットのご案内│
LIXIL BOOKLET 『ふるさとの駄菓子−石橋幸作が愛した味とかたち−』
3月中旬発売予定(80ページ予定、本体価格1,800円)
│巡回展のご案内│
東京会場:2018年6月7日(木)〜8月25日(土)開催予定