2018年05月16日
海を渡ったニッポンの家具
−豪 華 絢 爛 仰 天 手 仕 事−
Japanese Furniture That Went Overseas : Exquisite Beauty & Delicate Craftsmanship
会期:2018年6月8日(金)〜8月21日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)
写真1:袖簞笥付き飾り棚 (部分)/寄木細工
全体を覆い尽くす寄木細工と随所にあしらわれた透かし彫刻。脱着式の袖簞笥は斜めにカットされ、引出しもそのラインに沿って台形になっている。
所蔵:金子皓彦コレクション、撮影:大西成明
「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2018年6月8日(金)〜8月21日(火)の期間、「海を渡ったニッポンの家具−豪華絢爛仰天手仕事−」を開催します。
明治時代に、輸出用として作られた家具とはいったいどのようなものだったのでしょうか。本展では、日本の伝統的な超絶技巧を駆使しながら欧米向けにアレンジされたフォルムと装飾が特徴の輸出家具10点を中心に展示し、豊穣な明治デザインの魅力に迫ります。
│開催概要│
「海を渡ったニッポンの家具−豪 華 絢 爛 仰 天 手 仕 事−」
Japanese Furniture That Went Overseas : Exquisite Beauty & Delicate Craftsmanship
│展覧会の見どころ│
1873年のウィーン万博で一躍人気を博した日本の工芸品。浮世絵をきっかけに巻き起こった欧州のジャポニスム流行の波に乗り、日本は輸出振興や殖産興業に力を入れ、美術工芸立国を目指すようになりました。当時の陶磁器、七宝、金工品はその超絶技巧と海外向けの独特の装飾で、今日、関連の展覧会等でも多くの注目を浴びています。しかし、同じ目的でつくられた室内装飾としての家具は海外での需要が高かったにもかかわらず、今まであまりその存在を知られる機会がありませんでした。日本にほとんど現存せず、また美術工芸品と異なり家具は廃棄されることが多いためでしょう。そのような輸出家具は、西洋の生活様式に合わせた家具デザインに、日本の伝統意匠と細密精巧な技術が贅沢に施され、私たちはその圧倒的な密度に驚愕すると同時に、職人たちの想像を絶するほどの豊かな表現力に打ちのめされます。本展では、世界が機能主義の近代デザインへと傾倒していく前の、人間味たっぷりで濃密な世界観を醸し出す明治の輸出向け家具類から、寄木細工、芝山細工、青貝細工、仙台簞笥、横浜彫刻家具(写真のみ)の5種類10点を展示し、仰天の手技や特徴、魅力を紹介します。
近代デザイン以降、忘れ去られた明治の家具デザインや室内装飾に新たな光を当て、その卓越した技巧と表現の面白さを通して、同展が当時の輸出家具の再評価へのきっかけとなれば幸いです。
写真2
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●主な展示
寄木細工/ 飾り簞笥・・・写真2
異なる色や形の木片を継ぎ合せて、美しい幾何学模様をつくり出す寄木細工。江戸時代に盛んにつくられ、明治には外貨獲得のため豪華な寄木細工の家具が海を渡った。家具を覆い尽くす幾何学模様、多彩な文様パターンなどから、当時の工芸技術のレベルの高さを窺い知ることができる。
<写真2>欧米人の椅子座の生活に合わせ、4脚台の上に載せたためか不思議な形をしている簞笥。乱寄木の中に木象嵌や小寄木を散らす技とセンス、また錺金具も見事。観音開きの扉の鏡面には、蒔絵や螺鈿などの装飾が施されている。
芝山細工/衝立 「豊年満作図」・・・写真3,4
貝や象牙、鼈甲、珊瑚、瑪瑙などをレリーフ状にはめ込んだ精巧な芝山細工は江戸時代に考案され、大名たちを虜にした。装飾が立体的で華やかであるため、幕末から明治にかけて国内外で人気を博した。漆や蒔絵、螺鈿、彫刻など様々なジャンルの工芸技法が組み合わされことも人気の理由。
<写真3,4>実りの秋、稲や柿を収穫した人々の姿と、のどかな里山風景が描かれた衝立。人物は象牙で細工され、農民らの衣装は蒔絵による豪華な錦や金襴。写真4の白い煙草入れの装飾にも見られるように、細部に翡翠や珊瑚などの美石も使われ、目を見張る。
青貝細工/ライティングビューロー・・・写真5,6
螺鈿技法のひとつである青貝細工は貝片の下に色を伏せるのが特徴。華やかな装飾性を持つ一方、精緻な技巧が要求される。江戸後期から明治にかけて海外にも輸出された。
<写真5,6>華やかな花鳥文が描かれたビューロー。引出し部分に描かれた桜は、淡いピンクとブルーの花弁、紅色に輝く葉など、そのグラデーションが美しい。
仙台簞笥/鏡台付き仙台簞笥・・・写真7
仙台簞笥は、元は武家用の簞笥で、旧仙台藩領の宮城県や岩手県南部で使われていた。明治22年、仙台に開発された外国人専用避暑地にいた宣教師たちの目に止まり、その評判が広がったと推測する。その後海外に輸出されるようになった。木工・漆工・金工の技が三位一体となった仙台簞笥は、堅牢で美しく、そういったことも外国人の家具観に合致した。
<写真7>ドイツ人に依頼され制作したものに失敗がみつかり輸出されずに残った貴重な仙台簞笥(大正4年頃)。鏡の位置が高いのは、自分を映すというより、照明の光を反射させて室内を明るくするためのものと考えられる。
<写真8>仙台簞笥の錺金具の図案「虎図」。輸出が隆盛だった明治30年代には多くの錺金具師が活躍した。この図案は、そのなかの一人、菊池松右衛門(1842〜1930)が所蔵していたもの。錺金具はまさに美術工芸品として見応えがある。
【写真キャプション・クレジット】撮影すべて:大西成明
写真1:「袖簞笥付き飾り棚」W1230×D350×H1530mm
写真2:「飾り簞笥」W645×D320×H1170mm
写真3・4:衝立「豊年満作図」W1820×H1660mm
写真5・6:「ライティングビューロー」W1010×D450×H1495mm 以上写真1〜6すべて 所蔵:金子皓彦コレクション
写真7:「鏡台付き仙台簞笥」W1195×D460×H1970mm 所蔵:湯目とし
写真8:錺金具の図案「虎図」W315×H235mm 個人蔵
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東京会場:2018年9月6日(木)〜11月24日(土)開催予定