ここに掲載されている情報は、発表日現在の情報です。
ご覧になった時点で内容が変更になっている可能性がありますので、あらかじめご了承ください。

巡回企画展のご案内|大阪会場|

2018年08月20日

富士屋ホテルの営繕さん
―建築の守り人―

Fujiya Hotel Maintenance and Repair−The People Who Safeguard Architecture

会期:2018年9月7日(金)〜11月20日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)

「富士屋ホテルの営繕さん−建築の守り人」DMデザインより

「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)の企画展では、2018年9月7日(金)〜11月20日(火)の期間、「富士屋ホテルの営繕さん−建築の守り人−」を開催します。

箱根のランドマーク、富士屋ホテル。明治期からのクラシックホテルは登録有形文化財を含む和洋混交の建築群を擁し、今も訪れる客を魅了しています。このホテルを開業当時より支える営繕は、建物の修繕の仕事をとおして昔と変わらぬ佇まいを守り続けてきました。本展では、富士屋ホテルの舞台裏で活躍する営繕の仕事とその痕跡が垣間見られる様々な場面を、写真や映像、実資料など約90点で紹介し、歴史ある建築を守り受継ぐ富士屋ホテルの魅力を浮き彫りにします。

│開催概要│

「富士屋ホテルの営繕さん−建築の守り人−」
Fujiya Hotel Maintenance and Repair−The People Who Safeguard Architecture−

会 期
2018年9月7日(金)〜11月20日(火)
開館時間
10:00〜17:00
休館日
水曜日
会 場
LIXILギャラリー(大阪会場)
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 12階
入場料
無料
企 画
LIXILギャラリー企画委員会
制 作
株式会社LIXIL
協 力
富士屋ホテル、金子皓彦、嶋写真店、箱根町立郷土資料館
展示デザイン
+建築設計 田代朋彦

http://www.livingculture.lixil/topics/gallery/g-1809/

│展覧会の見どころ│

富士屋ホテルは、明治11年日本初の本格的リゾートホテルとして箱根に開業しました。歴代社長のアイデアと地元の棟梁による和洋混交の独特な建築群で構成され、平成9年には登録有形文化財にも指定されました。この老舗ホテルには、「営繕さん」と親しみをもって呼ばれるスタッフが在任し、建築物の営造や修繕を行っています。富士屋ホテルが今日もなお創業当時の趣を残している理由の一つに、裏方である営繕さんの仕事があるのです。そのホテルが、2018年4月から大規模な改修のため、創業以来初めてとなる2年間の長期休業に入ることになりました。今回この機会を利用して、営繕の仕事の痕跡が残る様々な場面を取材しました。日々の細やかなメンテナンスから庭園の橋や水車、檜風呂づくりにいたるまで多岐にわたる仕事を目にすると、彼らの役割がこのホテルには欠かせないものだと実感できます。
本展では、富士屋ホテルを支える営繕の仕事をとおして、歴史を受け継いで守られてきたおもてなしの空間の魅力を紹介します。会場では、この機会にしか撮れない建物の内外の撮り下ろし写真を中心に、富士屋の象徴である営繕作の朱赤の欄干をホテルから移設展示、また手がけた空間の例としてコンシェルジュコーナーも再現します。さらには富士屋ホテル建築群の築造の変遷も古写真で辿ります。どうぞご期待ください。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5

●主な見どころ

<富士屋ホテルの建築と内部>

富士屋ホテルの建物の多くは、建築家が介在せず経営者と地元の棟梁によって建てられました。特に三代目社長、山口正造は破天荒なアイデアマンで、華やかな装飾を次々に取り入れました。本領を発揮したのが、昭和11年竣工の「花御殿」です(写真1)。大きな千鳥破風の屋根が印象的なこの棟は、全室に花の名前が付けられ、各部屋の細部に花のモチーフが使われています。今や富士屋ホテルを代表する建物ともいえるでしょう。また、食堂棟のメインダイニングの柱には正造の顔を模した飾りが随所に施され(写真2)、社員がきちんとサービスをしているか見張るためという逸話も残されています。ダイニングは利用客も多いため椅子や床・換気口など、度々修理修繕が必要になる場所でもあり、営繕さんが日々メンテナンスをして状態を保っています。その他、木彫刻の飾りや格天井、花頭窓などが施された本館や西洋館なども建築的な見どころが多く、それらを営繕さんの仕事の痕跡と併せて写真でご覧いただきます。

<ホテル内の象徴が出現>

富士屋ホテルは開業当初、ほとんどのお客様が外国人だったこともあり、彼らにとって異国情緒のあるデザインを様々に取り入れてきました。その代表例が欄干です。 擬宝珠 ぎぼし や彫刻が施された欄干は竣工時からあるものですが、その後必要な個所に合わせ営繕作の朱赤の欄干が取り付けられました。ホテル内は迷路のように、食堂、本館、西洋館、花御殿などが廊下で繋がり、欄干はそのアクセントとしても効果的に用いられています。会場では実際にホテルの入口にあった欄干を借用し、会場内で再現展示します(写真3)。

<コンシェルジュコーナーの再現>

ホテルのフロント脇にある、コンシェルジュコーナーの家具類もほとんどが営繕さん作のものです。木製机や木製パンフレットスタンドなど同じテイストで品よく作られています。これらの家具類でこのコンシェルジュコーナーを再現します。

<営繕さんの仕事>

富士屋ホテルの「営繕」は、施設管理課のセクションに属し、仕事内容は木工事、左官、溶接、塗装など多岐にわたります。ホテルの一角にある作業小屋で、ホテルの様々な要望に応えるため日々作業が行われてきました。平成の初期までは活版印刷も行われており、メニューやチラシなどがここで刷られていました。小屋の全景を映したパノラマ写真(写真4)とともに、営繕さんが使用している道具類(写真5)、かつての活字や活版メニューなどを展示します。また、同じく富士屋ホテルを陰で支えている施設管理課の「技 術」が管理するボイラー室や配管路などのバックヤード写真も見応えがあります。その他、営繕さんのインタビュー や作業風景を映像でご覧いただきます。

【写真キャプション・クレジット】撮影すべて:白石ちえこ

写真1:
昭和11年(1936)竣工の「花御殿」。外観は大きな千鳥破風の屋根を持ち、校倉造りを模した壁が特徴。名前の由来は43室すべてに花の名前が付けられていることで、客室のドア、カギなど、細部に花のモチーフが使用されている。
写真2:
食堂棟・メインダイニングの柱飾り。きちんと社員がサービスをしているか見張るために、三代目社長である山口正造の顔があしらわれたと言われている。
写真3:
本館のホテル入口にある朱赤の欄干。
写真4:
営繕小屋内の全景。
写真5:
営繕さんが普段使用している大工道具や彫刻刀類。

│関連企画のご案内│

〔講演会〕 営繕がつなぐ、富士屋ホテルの歴史と空間

日 時
2018年10月27日(土)14:00〜15:30
講 師
山口由美(ノンフィクション作家)
会 場
LIXILショールーム大阪 セミナールーム
大阪市北区大深町4-20 グランフロント大阪南館タワーA 11階
費 用
無料(※要予約、定員70名)
予約方法
電話もしくはホームページから
内 容
山口由美氏は富士屋ホテルの最後の同族社長であった山口堅吉を祖父にもつ縁で、幼少のころからこのホテルを何度となく訪れ、そこで働く人々やホテルの隅々を観察してきました。また1994年に上梓した『箱根富士屋ホテル物語』(文庫版、2015年)がノンフィクション作家としての出発点といいます。
今回は創業140年となるホテルの歴史にも触れていただきながら、裏方として陰で支える営繕の仕事についてエピソードや思い出を含めて語っていただきます。

│新刊 LIXILブックレットのご案内│

LIXIL BOOKLET 『富士屋ホテルの営繕さん−建築の守り人−』

9月中旬発売予定(72ページ予定、本体価格1,800円)

│巡回展のご案内│

東京会場:2018年12月6日(木)〜2019年2月23日(土)開催予定