2018年10月10日
株式会社LIXILが運営する、土とやきものの魅力を伝える文化施設「INAXライブミュージアム」(所在地:愛知県常滑市)では、2018年11月3日から2019年4月9日まで、企画展「和製マジョリカタイル―憧れの連鎖」を開催します。
めまぐるしく変化する現代の生活のなかで、風情ある古い建築に残された少し懐かしく可愛げのある「和製マジョリカタイル」が注目を集めています。
多色草花文レリーフタイル
不二見焼
撮影:梶原敏英
「和製マジョリカタイル」は、大正初めから昭和10年代頃に日本で生産された多彩色レリーフタイルで、近代イギリス製の「ヴィクトリアンタイル」を模倣してつくられたものです。1800年代半ばにイギリスで売り出された、ヴィクトリアンタイルの中でも華やかな発色と艶が美しいタイルは、イタリアなどのマヨルカ焼の流れをくむ多彩色表現という意味で「マジョリカタイル」と名付けられ、日本でもその呼び名で広まりました。
明治期の日本では、洋風建築に使われたヴィクトリアンタイルの意匠の美しさや耐火性・耐水性が注目され、日本での生産が望まれるようになります。国内のタイルメーカーたちは、その声に応えるべく研究を重ね、明治40年頃には乾式プレス成形法による「和製マジョリカタイル」をつくりだしました。安価で高品質なそのタイルは、昭和初期の輸出最盛期には、東南アジア、インド、中南米、オーストラリア、アフリカなどにまで輸出され、最新の研究では輸出先のニーズに合わせたタイルが作られていたことも明らかになっています。また台湾では「和製マジョリカタイル」に歴史的価値を見出し保存する動きも見られます。
本展では、イギリス製のタイルへの憧れから生まれた「和製マジョリカタイル」が、やがて世界のさまざまな地域で建築を彩り、根づく様子をご紹介するとともに、「和製マジョリカタイル」の復元品による「懐かしくも新しい」タイル空間を会場内で提案します。独特の美しさと軽やかさの中に歴史がこめられた「和製マジョリカタイル」の世界をご覧ください。
注)マヨルカ焼:ルネサンス期にイタリアで発展した錫釉色絵陶器。錫を加えた釉薬で下地を白く化粧した後、色絵を施す。スペインのマヨルカ島を経由して伝わったことから「マヨルカ焼」と呼ばれる。
企画展 「和製マジョリカタイル―憧れの連鎖」
Japan-made Majolica Tiles―Trail of Inspiration
左上:果物レリーフタイル(桃、ザクロ)、製造会社不詳
左下:草花文チューブライニングタイル
佐治タイル
右下:多色チューブライニングタイル(草木と鳥)
不二見焼
撮影:梶原敏英(3点全て)
■オープニングイベント
台湾花磚博物館(台湾タイル博物館) 館長徐嘉彬氏講演
「台湾のマジョリカタイルの歴史と展望」
徐嘉彬氏プロフィール
台湾タイル博物館 館長
国立台湾大学 機械工学研究所 卒
財団法人 工業技術研究院(ITRI) 在
1998年より約20年にわたり台湾のマジョリカタイルの収集、保存、再生につとめる。そのほとんどは20世紀初頭を中心に日本でつくられた和製マジョリカタイル。2016年にタイルにまつわる知識や教養を広めるため、出身地嘉義に台湾タイル博物館を設立。マジョリカタイルの美しさや価値を現代の生活に取り戻したい、との強い思いで活動を続けている。
■展覧会のみどころ
展覧会場内に「マジョリカタイルの回廊」が出現します。和製マジョリカタイルが製造されていた時代は大正から昭和初期頃までですが、その時代のタイルのデザインをモチーフとして「懐かしくも新しい」タイルの空間を再現いたします。
当時のカタログ等の資料を交えながら、日本のメーカーのマジョリカタイルをめぐる工業史も解説します。中でも「海外へ渡った日本のマジョリカタイル」についての紹介は必見です。
「さらさ西陣」(京都市)
昭和初期に建てられた銭湯をカフェとしてリノベーションした。「和製マジョリカタイル」がふんだんに使われている。
撮影:梶原敏英
■主な展示品(予定)
・ 「ヴィクトリアンタイル」約10点
・ 和製マジョリカタイル 約80点
・ 和製マジョリカタイルが使われた国内外の建築事例写真
・ 和製マジョリカタイル復元品による空間デザインの提案
■関連書籍 「和製マジョリカタイル―憧れの連鎖」
2018年11月30日発刊予定
天地:257mm×左右182mm/オールカラー本文64ページ程度
無線綴じ
定価:1,500円(税別) 発行:LIXIL出版
編集制作:建築資料研究社+アイシオール