2018年11月14日
吉田謙吉と12坪の家
−劇的空間の秘密−
Kenkichi Yoshida and His Tiny 12-Tsubo House:Secrets of Dramatic Space Design
会期:2018年12月7日(金)〜2019年2月19日(火)
会場:LIXILギャラリー (大阪会場)
写真1: 「12坪の家」 書斎の出窓に腰掛ける吉田謙吉と居間兼ホール入り口に立つ娘・珠江 (1949年夏)
写真提供:吉田鹿乃子
「建築とデザインとその周辺」をめぐり、独自の視点でテーマを発掘するLIXILギャラリー(大阪会場)では、2018年12月7日(金)〜 2019年2月19日(火)の期間、企画展「吉田謙吉と12坪の家 −劇的空間の秘密−」を開催します。
舞台美術を中心に考現学採集、装幀、文筆業など多彩なジャンルで活躍した吉田謙吉(1897-1982)は、戦後、自らの設計で12坪の家をつくります。小さいながらもステージがあり、恩師の一人、今和次郎に「愉快な家」と評された自邸です。
本展は、アイデアとユーモアに溢れた吉田謙吉の独創的な空間づくりの秘密を、「12坪の家」にいたる系譜を辿りながら約140点の資料とともに探ります。
│開催概要│
「吉田謙吉と12坪の家 −劇的空間の秘密−」
Kenkichi Yoshida and His Tiny 12-Tsubo House:Secrets of Dramatic Space Design
│展覧会の見どころ│
片流れの屋根に赤い板壁、窓周りの白がアクセントのかわいらしい家。これは戦後、吉田謙吉が52歳(1949年)のとき、東京・港区飯倉(現・麻布台)に自ら設計して建てた自邸です。12坪、約40㎡の狭小住宅は当初家族3人の住居としてスタートしました。ステージと観客席用のホールを内在するこの家は、謙吉が舞台美術家であったことを象徴しています。故に、一般的な間取りとは明らかに異なるのがこの家のオリジナリティです。この「劇的空間」を解き明かすには、彼の多面的な活動も影響していると推測されます。関東大震災直後、今和次郎らと立ち上げたバラック装飾社、それが発展して誕生した考現学、また築地小劇場を中心とした舞台美術家としての仕事や住まいの提案の数々・・・。世の中が苦難の中にあっても自由で新しいまなざしを持ち、人を楽しませることが好きで、自身も人生を楽しく謳歌することを望んだ謙吉の生き方が、様々な活動のエッセンスとともに、「12坪の家」に満ちています。
本展では、「12坪の家」を基軸に、謙吉が残した空間づくりに関わる数多くの記録や資料からその秘密を探り、同時に前向きに楽しく生きた吉田謙吉の人となりを浮き彫りにします。
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●展示構成と主な展示
劇的空間 「12坪の家」
12坪の家の詳細を明らかにすることを試みる。謙吉は建てる前の理想図や建てた後の平面図を雑誌等に掲載した。38年間12坪の家に住んだ娘・塩澤珠江氏の記憶とわずかに残されたそれらを頼りに完成させた1/20の模型(写真2)や、会場内に設ける小ステージで謙吉が使用していた仕事机や舞台幕を展示。狭い故に各部屋に複数の用途が兼ねられるなど、様々な工夫が施された間取りの不思議を解明する。
「12坪の家」への系譜1:自由であたらしいまなざし
バラック装飾社と考現学
1923(大正12)年の関東大震災で東京は焼け野原と化した。被災者たちは自力でバラック(掘立式の建築物)を建て始めると、謙吉は恩師の今和次郎らと共に街を歩き風俗をスケッチした。これが「バラック装飾社」につながり、のちの「考現学」誕生のきっかけとなった。苦境時に潤いと華やかさを提供する活動と世の中の変化を受け止め、観察することで養った自由であたらしいものの見方は謙吉ののちの仕事に大きな影響を与えた。会場では、「バラック装飾社」の仕事を写真で紹介し、「考現学」に関しては、謙吉が採集した風俗のスケッチや調査データ等の実資料(写真3,4)を展示する。
「12坪の家」への系譜2:人をたのしませる空間づくり
舞台美術と店舗設計
演劇人として、また舞台美術家としてより本格的に歩み始めたのが、同じく震災後の翌年1924年にバラック建築として建てられた築地小劇場での活動である。謙吉は同劇場の第一回公演「海戦」の舞台美術を担当し、日本における本格的な表現派のそれとして高く評価された。また、低予算の中で「丸太組み構成舞台」を創案(写真5)。一部を張り替えるだけで場面を素早く転換させることができた。ここでは、謙吉が設計した舞台の模型や手描きの舞台図を中心に展示し、彼の空間づくりにおけるエンターテイメント性を紹介する。
謙吉は、いくつかの店舗設計も手掛けた。その一つが昭和9年に依頼された銀座のバー「機関車」(写真7)。自身も鉄道好きで、内装を鉄板で張り巡らすなど、舞台美術をつくるように楽しく設計したという。ここでは、バー「機関車」の内装写真や「機関車」のマッチラベル他4種類の店舗設計の提案スケッチなどを展示する。
住まいをたのしむ、暮しの工夫
様々な活動を通じてあたらしいものの見方を培ってきた謙吉は、戦前から新聞や雑誌に“暮しの工夫”というテーマで実用的な提案を数多く発信した。最終章では、アマチュアカメラマン、主婦、教員、新婚夫婦などそれぞれの読者層に合せた住まい方の工夫が掲載された記事約10点を展示する。苦境を生き抜いた謙吉による自由でたのしいアイデアで彩られている。
【写真キャプション・クレジット】
│関連企画のご案内│
〔講演会〕 愉快な家 父・吉田謙吉の住まいの夢
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12月15日発売予定(80ページ予定、本体価格1,800円)
│巡回展のご案内│
東京会場:2019年3月7日(木)〜5月25日(土)開催予定